戴き小説「23時」(遙か3・ヒノ×望)

 23時  



時刻は、23時。


街の灯りが消え、満天の星が空を彩る時刻。

凛とした冬の透明な空気の中で輝くそれらは、
キラリキラリと瞬いて、深まる夜を楽しもうと誘う。


「今日も一日、皆と一緒で楽しかったなぁ」


硝子の向こうにある、誘惑の光りを目にしながら、窓際に立つ望美。
その口元は綻んでいる。


「異世界の皆が、私の世界にいる……凄いことだよね」


喜んでばかりはいられない状況、にあるのは分かっている。

それでも、楽しく過ごした一日を思い出す度に、
『仲間』が近くにいる喜びを、噛み締めてしまう。


「皆、もう寝たのかな……


隣を見れば、まだ電気がついている部屋がいくつかある。
誰が起きているのだろうと考えて、
ふいに一人の顔が浮かび、頭を振った。


「なんで、一人だけ浮かぶんだろう」


その理由に、なんとなく心当たりがある。
でも、それを認めるには、まだ勇気が足りない。

彼から捧げられる言葉が、
見も心も蕩けるようなものばかりだとしても。


「本気なのか、からかっているのか、分からないから……


ぽつりと言って、望美はもう一度頭を振った。


「って、考え事してる場合じゃないよね。
さ、さーて。本当に寝ないと。明日も皆で出かけるんだし!」


望美はわざとらしく大きな声で言って、
カーテンを閉めると、電気を消す為に、
部屋の入口近くにあるスイッチへと、足早に向かった。


まだ頭の隅に残っている、緋色を遠ざけるように。


「おやすみなさい」


自分自身に就寝の挨拶をして、灯りの電源をオフにした瞬間。
ひゅっという冷たい風が足元を過ぎた。

カーテンのバタバタと踊る影が、月明かりで部屋の壁に映る。
そして、コンッという壁を叩く音が耳に届いた。

驚いて、振り向けば。
開かれた窓と星を背に、鮮やかに笑う男性(ひと)がいる。


「こんばんは、姫君。
今日は星が明るいね……これなら『らいと』も必要ないかな」

「ヒノエ君っ!?」

さっきから頭に浮かんで、なかなか消えない男性(ひと)が、
くっきりはっきり姿を見せている現実に、
望美はくらりと眩暈を起こした。


「な……何してるの!?」

「随分驚いた顔をしてるね。
ふふっ、戸締り不十分だよ。姫君」

「戸締り不十分っていう話じゃなくて、
突然部屋に入ってきたら駄目だよ!」


歩み寄るヒノエに、眉根を寄せて言えば、
大袈裟に肩を竦められた。


「壁を叩いて『のっく』はしたけど?
あぁ、靴もちゃんと脱いでいるよ」

「靴とかそういう問題じゃないし、
ノックは部屋に入る前にするものなの!
というか、また窓から……はぁ」


前科があるだけに、深い溜息になってしまう。


「お前の驚き顔が、愛らしいのが悪い。
と思って、諦めるんだね」

「あ……愛らしいって……また、そういうこと言う……

「ん?顔が赤いね。
怒っているのかい?それとも、恥らってる?」


目の前で立ち止まって、顔を覗きこまれる。

紅玉の瞳は、薄い闇の中で見ると石榴の赤に近くて。
魅惑の力を強めた色に、鼓動が跳ねた。


「も、勿論、怒ってるんだよ!」


それを悟られたくなくて、
頬を膨らませ、怒っているという形を作っても、
反省の色は無く、不敵に笑われるだけだった。


「ふふっ……それで怒っているつもりかい?
まぁ、どちらでも、姫君が眠るまでの一時を、
オレが奪うのは変わらないんだけどね」


サラリと、とんでも発言。
に、望美の目が点になる。


「一時って、いつまでここにいる気なの?」

「姫君の寝顔を見るまで。だけど?」


更に続く、とんでも発言。
に、顔色が赤と青を行ったり来たりする。


寝顔なんて、絶対見せられない!


言葉にしなくても、表情で伝わったのか、
ヒノエが軽く片目をつぶって、小さく笑った。


「些細なことは気にせず。さぁ、褥に……姫君」

「全然些細じゃないよっ!そんなの……こ、困るし」


一歩下がって、けれど、すぐに距離を縮められて、
トンッと心臓の上を軽く指でノックされた。



本当に困ってる?オレを追い出したい?



問いかけに、息を飲む。

何も言い返せないのは、
今、ここにヒノエがいて、蜜の言葉を並べられて、
嬉しいと心の隅で思っている自分がいるから。


「返事が無いってことは、困ってないみたいだね」

「それは!……わっ!」


反論を紡ぐ前に、突然揺れた視界に、望美は目を見開いた。


「運んであげるよ」

「え!?」


驚きの声を上げても、
攫うように抱き上げられた体は、あっという間にベッドに運ばれ、
ふかふかの布団をかけられた。


「う……お願いだから、見ないでよ……

「それは姫君の願いでも、叶えられないかな」


床に膝を、ベッドの上に肘をついて、
ヒノエは楽しそうに自分の姿を眺めている。

寝顔を見る。という宣言を本当にする為に。


「ところで……姫君は『幼馴染』に見せたんだろ?寝顔を」

「へ?」

「そんな話があっちで出てね……


あっちと指差す方向には、有川家がある。
望美は瞬きを繰り返した。


「そんなの昔の話だよ?
一緒にお昼寝してたような子供の頃の話」

「じゃあ、大人のお前の寝顔は、オレだけのものだね」



ね、可愛い寝顔をオレだけに見せて……

オレの唯一の姫君。



深い眼差しで言われて、耳の端まで熱くなる。

小さな独占欲にときめいてしまう胸を、
手でそっと押さえた。


「い、嫌だよ……恥かしいし」


けれど、喜びと恥じらいは別で、小さく否定を呟けば、
ヒノエが顔を近づけてくる。


「じゃあ、眠るのを我慢するしかないかな。
因みに、顔を隠すような行動をとったら、
もっと特別な顔を見せてもらうことになるから……
やめておいた方が良いだろうね」

「もっと特別って……何?」

「聞きたい?」

「やっぱり、やめておく」


嫌な予感がして断れば、「残念」とくすくす笑われた。
ヒノエはそのままの姿勢で、再び望美を眺め始める。


コチコチコチ……


時計の針の進む音が、部屋に響くだけの時間。
に、焦れて、望美が口を開いた。


「飽きないの?」

「飽きないね」


間髪をいれずに返ってくる答え。

眩しそうに目を細められ、
早鐘を打つ鼓動を誤魔化す為に唇を尖らせた。


「ヒノエ君が先に寝ちゃえば、寝顔を見られないのに……


不満を声に出せば、
ヒノエの口の端が上がって、目の奥が光った。


「つまり、オレはここで眠っていいってことだね」

「え!」

「じゃあ、我慢比べを始めようか。
姫君が先に眠るか、オレが先に眠るかの」


いつの間にか、そんな二択になっていて、
望美の目が点になる。


どこから、どうなって、そうなったの!?


頭の中の疑問符を整理している間に、
ヒノエが自分の隣に体を滑り込ませた。

外の冷えた空気がほんの少し紛れ込んだ後、
二人の体温が重なって、体を包む温度が急上昇する。


「ヒノエ君!?隣で眠るなんて駄目だよ!」

「そう?オレは駄目とは思わないけど?」

「私は思ってるのっ!」


向かい合って眠る体勢。
長い睫も口角を上げる唇も、なにもかもよく見えて、
吐息が肌をくすぐる度に、動揺して、瞳が揺れる。


「安心して……今は何もしないよ……


囁いて、ヒノエの指先が、望美の髪に触れ、
何度も優しく梳く。

穏やかな手の動きに、強張っていた体が徐々にほぐれて、
不思議なことに、それ以上の文句が、口から出てこなかった。


「仕方ないなぁ……もう。
でも、これから……本当に我慢比べをするの?」

「んー、そうだね。
そうしたいと思っているけど、もしかしたら、
オレが先に眠ってしまうかもしれないね。
この温もりがあまりにも心地良くて、
眠りの誘惑に勝てそうにないから」

「え?ね、眠いの?」


ヒノエから先に、眠いという発言が出るなんて意外で、
望美は自分に有利だという状況も忘れ、聞き返してしまう。


「まぁね……お前の寝顔を見たかったけど、
こうして隣で眠るのも悪くないから、
どうしても眠くなったら、諦めるかな」

……そんなに眠いんだ」

「春の陽が隣にあるせい。だろうね……


話の途中で既に、ヒノエの口調はとろとろとしたものに変わっていて、
瞼もゆっくり閉じたり開いたりを繰り返している。

それから、二言三言交わしている間に、
ヒノエの瞼は完全に閉じて、スーという寝息が聞こえてきた。


「ヒノエ君?あの……眠ったの?」


答える人がいないと知っていて、問いかける。
指で軽く頬を突いても、起きなくて、望美は呆れた溜息を吐いた。


「振り回すだけ振り回して、ずるいよ」


でも、そんなところが。


「大好きなんだよね」


相手の目を見て言えない不甲斐無さに苦笑して、
望美も静かに瞼を閉じる。

緊張して眠れない。そう思っていたのに、
ヒノエの規則正しい呼吸を耳にしているうちに、
ゆるゆると意識を手放した。

そして、浅い夢をいくつか通り過ぎて、深い眠りに落ちる。
そのギリギリのところで、ベッドの軋む音と衣擦れの音を聞いて、
望美は、ほんの少しだけ眠りの世界から引き返した。


「そろそろ眠った頃かな……
ふふっ、オレが先に起きれば、オレの勝ちになるんだよ……姫君。
寝顔、ご馳走様」


内緒話をするような、微かな声の後。
蜂蜜みたいにとろりとした口づけが与えられる。



「オレも大好きだよ……オレの唯一の姫君」



甘い甘い告白は。


唇に何度も触れる柔らかな感触は。


本当に現(うつつ)なのか。



その答えを知りたくて、半分寝ぼけた状態で、
腕を僅かに上げ、手探りでヒノエの髪に指を埋めた。


「そんな風に煽る方法……どこで覚えたんだい?」



からかう口調に滲むのは恋情。

そして、深まる口づけ。



この先にある夜の姿は、誰にも見せられない。
それは、恋を繋げた二人だけが目に出来る姿なのだから。



end

阿蒼さまのサイト3minさんより戴いてきました09年お年賀フリー小説でヒノエ×望美の甘々なお話しです。

迷宮設定。(戴いてからUPまでに時間が経ってしまいました;)

■□■

二次創作に興味のない方等は回れ右して下さい。

お話しの権利は上記の方にありますので二次配布やご迷惑になる様な行為は一切お止め下さい。宜しくお願いします。

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戴き小説「コタツ」(遙か4・アシュv千)

阿蒼さまのサイト3minさんより戴いてきました09年お年賀フリー小説でアシュヴィン×千尋甘々なお話しです^^

アシュED後設定~。遙か4は未Playでマンガ版しか知りませんがお気に入りなので配布中にお目にかかれて嬉しいです。

(戴いてからUPまでに時間が経ってしまいましたが;)

■□■

二次創作に興味のない方等は回れ右して下さい。

お話しの権利は上記の方にありますので二次配布やご迷惑になる様な行為は一切お止め下さい。宜しくお願いします。

 コタツ 




のどかという言葉が似合いの日が過ぎて、
ゆるりゆるりと陽が落ちていく。

芽生え、綻び、開いていく。
喜びと生命力に満ちた草木、そして花々が、
橙の陽に包まれて、穏やかな一日を終えようとしている。

根宮の広々とした庭にある、石で出来た長椅子に座って、
千尋は薄い紫へと変わる空を仰いだ。

黒い恐怖が消えたそこには、
懐かしさと新しさが混ざる『平和』が広がっていた。

苦しい戦いが続いた後の、清められた景色は、
何度見ても心を安らかにしてくれる。

復興が続く常世の国。

毎日が忙しいけれど、こうして国が癒えていくのなら、
私はまだまだ頑張れる。

思って、目を細めていると、背後から土を踏む音が聞こえ、
振り向くと同時に「千尋」と名前を呼ばれた。


「こんな所にいたのか。探したぞ」

「アシュヴィン!」


『大好きな人』が姿を現して、千尋の声が弾んだ。

アシュヴィンは、千尋の隣に座ると、
小さく笑って、顔を覗きこんでくる。


「陽が傾いてきているというのに、一人でどうした?」

「今日も忙しかったから、ちょっと息抜きしてたんだ。
ここ、風が通って気持ちが良いし、花の香りもするし」

「気持ちが良い……か」


呟いて、アシュヴィンは空からの息吹に揺れる花を眺め、
そして、くしゃっと千尋の頭を撫でた。


「そんな場所に変えたのはお前だ……

「え!ち、違うよ。皆で変えたんだよ」

「そうだが、やはりお前の力が大きい……感謝する」


ありがとう。


口にして、素直なそれに照れたのか、
アシュヴィンは千尋から顔を背けた。

今度は千尋がくすくすと笑う。


「なんでこっちを見てくれないの?」

……指摘は無しだ。
それより、風にあたりすぎていないか?寒くは無いか?」


突然の話題変更も照れ隠しの一つ。
それをあえて追求せずに、千尋は首を振った。


「大丈夫。そんなに寒くないよ」

「だが、今、ここでお前に倒れられたら困る」


言って、アシュヴィンは千尋の肩に腕をまわし、引き寄せた。
布越しに体温が滲んで、鼓動が跳ねる。


何度も触れ合っているのに、伝わる熱に恥かしくなってしまう。

恋心が深ければ深いほど、嬉しいのに、顔が熱くなる。


「ほ、本当に大丈夫!
あっちの……異世界の冬なんて凄く寒いんだよ。
これくらいで、倒れるわけないよ」


早鐘を打っている心音を聞かれたくなくて、
体を離しながら、慌てて口を動かした。

アシュヴィンは面白くなさそうな顔を作り、
離れた距離をもう一度縮めてくる。


「なるほどな……
だが、そんなに寒い季節をどう過ごしていたんだ?」

「どうって……?」

「こんな風に誰かの側で暖を取っていたか。
と、暗に聞いている」


それって、全然『暗』じゃないよ。


心の中で反論しながら、千尋の頭に浮かぶのは、
普通の高校生だった、橿原での日々。


冬になると風早がこたつを出して、
那岐と三人でぬくぬくしてたんだよね……


一瞬、懐かしさが通り過ぎて、頬を緩める。


そういう暖の取り方は、『誰かの側』に当てはまるのかな?


考えているうちに、焦れたアシュヴィンが先に口を開いた。


「答えが遅いな……

「別に遅いわけじゃ……

「遅い。で、誰だ?と言っても、
異世界で生活を共にしていたのは、二人だな。どちらだ?」


問いかける口調に棘がある。
しかも瞳には明らかな苛立ちが見える。

軽く睨まれて、千尋の額に一筋の汗が浮かんだ。


「どっちって……
アシュヴィンが想像しているようなことじゃなくて!」

「では、なぜすぐに答えない?」

「えーと、冬になると『こたつ』っていう物に入って温まるのだけど、
それは三人で座って使うものだから、
側にいると言えば、側にいるのかなぁって思って。
それで、答えが遅れたの」


千尋の話を黙って聞いていたアシュヴィンは、
器用に片眉だけ上げて、不機嫌な顔のまま、大袈裟な溜息を吐いた。


「分かった……では、その『コタツ』の形状を教えろ」

「な、なんで?」

「リブに作らせる。すぐに使えるように、急ぎでな」


サラリと言われて、千尋の目が点になった。


「あのー……アシュヴィン。
だから、そういう物じゃないし、
こんな暖かい気候で使う物じゃないんだよ?」

「分かっている」

「じゃあ、なんで?」


浮かんだ疑問を口にすれば、
今度は肩ではなく、腕を引っ張られ、
アシュヴィンに再び引き寄せられた。

広い胸に顔を埋めるような格好になって、
頬が、襟の開いた部分から、アシュヴィンの肌に直接触れる。

途端、耳の端まで赤くなっていくのが分かった。


「アシュヴィン!こんな場所で!」


誰が見ているか分からないのに。


眼差しを上げて、抗議しても、涼しい顔をされるだけ。


「アシュヴィン!」


もう一度名前を呼ぶ。
アシュヴィンは腕の力を強めて、千尋の耳に唇を寄せた。



……
懐かしんだお前の顔が、幸せそうだった。



囁かれた言葉に、え?と声を上げる。


「俺もそれをお前に与えてやりたい……と、
思ってはいけないのか?」

「アシュヴィン……

「『コタツ』が何かはよく分からんが、
そういう物なのだろう?」


見え隠れする嫉妬。

幸せにしたいという気持ち。


二つの感情が、胸の深い場所を震わせる。



こたつが、本当に完成するかどうかは別として。


二人が寄り添えるきっかけになれば。


二人が幸せを深めるきっかけになるのなら。


この場所で、そんな冬の風物詩も良いのかもしれない。



「熱いって文句は無しだからね」

「熱かったら、文句くらい言うさ」

「本当に、我が侭だね。アシュヴィンは」


言いながら、ふわりと微笑む。

ありがとうの気持ちを込めて。


……お前は油断ならないな」


笑いかけたのに、アシュヴィンの眉根が寄り、
千尋は首を傾げた。


「え?油断って?」

「その笑顔を、他の男から隠す物を、
リブに作らせるほうが先かもしれないな」

「どういう意味?……っわ!」


問いかけると同時に、
有無を言わさず長椅子の上に押し倒された。

天地が急にひっくり返って、焦ってしまう。


「な、ななな!何!?」

「『コタツ』が出来上がるまで、
今は、常世流で幸せと温もりを与えよう……


低い声の宣言の後、首筋に吐息が触れ、ペロリと舐められた。


「駄目だよ!アシュヴィン!」

「駄目?……俺を拒めるのか?……千尋」


言って、艶然と笑うアシュヴィン。
そして、うっとりとした口調で紡がれたのは。



『愛している』



そんな告白で。
千尋の瞳がうるりと揺れた。


「っ!……ずるい!」

「お前を手に入れる為なら、多少ずるくもなるさ」


アシュヴィンの笑みが深まった。
千尋の瞳はますます潤んでいく。


目の前にある。



甘い。


甘い。


とろとろに甘い微笑。



が、恨めしい。


言葉を返せない千尋の唇に、アシュヴィンの唇が重なった。

二度、三度、啄ばむような口づけを与えられ、
それが深いものへと変わり、体の芯が疼く。


常世の国の王様は、強引でせっかちで。




けれど、いつでも本物の恋をくれる。




「本当にずるい……


アシュヴィンに染められていく感覚。
に、酔いながら、弱い文句を口にして、目を閉じて。


千尋は、ほの暮れる天を瞼に閉じ込めた。



end

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戴き小説「乙女ゴコロ、恋模様」(恋華・斉v鈴)

鵺原 ユエさまのサイトさんより戴いてきました「xmas+お年玉フリー」小説で斉藤一v鈴花のほのぼのなお話しです。

年末年始とパソを開けない日が続きましたが2作とも配布中にお目にかかれて嬉しいです。

大石さんも斉藤さんもどちらもすき゜.+:。(*´v`*)゜.+:。

■□■

恋華シリーズや二次創作に興味のない方等は回れ右して下さい。

お話しの権利は上記の方にありますので二次配布やご迷惑になる様な行為は一切お止め下さい。宜しくお願いします。





きっと悪気があるわけじゃないんだろうけれど、
それは本当に心臓に悪いというか……―――。





「あ、あの…斎藤さん」
「なんだ。どうした、 鈴花」
「……、いえ」
「俺のことは気にしなくて良い。自分の作業を続けて構わない」

そうは云われても気になるのが道理。
繕い物をしているが斎藤の視線が気になって仕方無い。
自分の部屋にいるのに、 鈴花はまるで落ち着かなかった。
あの日以来、斎藤が自分に対しての扱いに変化が生じた。
暇さえあれば 鈴花に話しかけて来る。
未だそれなら良い。
だが、彼は二人きりになると呼称を変えて来るのだ。
桜庭』から『 鈴花』へと。
何故急に、と正直動揺が隠せないのが本音である。

「もう良いのか?」
「――えぇ」

あらかた繕いも進み、 鈴花は針を片付ける。
斎藤は彼女の傍らでその様を見守っていた。
ただ黙って涼香の髪に触れて梳いていく。
一瞬、その行動に驚くが一拍後に落ち着き、彼の好きにさせた。

「斎藤さん」
「ん、どうした」
「――どうして、急に呼び方を変えたりしたんですか?」

心地良く髪を梳かれながら、 鈴花は独り言のように問う。
柔らかな癖のある髪を気に入ったのか、斎藤は指を絡ませながら遊んで答える。
彼にとってはきっと別段差し支えないものだったのだろう。

「あぁ、近藤さんに聞いた。女は名を呼ばれると嬉しいと」
「――はぃいいい?」
「……?お前が女心を判れと云うから、俺なりにやってみたのだが……」

“違うのか?”、といきなりシュンとしてしまう斎藤に、 鈴花は逆に慌ててしまう。
オロオロしていると抱き締められ、細身ながらも引き締まった躯に包まれる。
ドクン、と心臓がひと際高鳴る。

鈴花、と俺に呼ばれるのが嫌なのか?」

それは意地悪な問い。
耳元で斎藤の心地良い声で囁かれ、 鈴花は真っ赤だ。
恐らく彼は彼なりに考え、悩んだのだろう。
まぁ、近藤に聞いたのは間違いだったかも知れないが。
だが、そんな彼の真っ直ぐな気持ちが伝わって来て、正直嬉しかった。

「――嫌じゃないです。…ただ」
「ただ?」
「いきなり下の名を呼ばれると、気恥ずかしいです…っ」

斎藤の胸に顔を押し付け、赤くなった自分を隠すようにして 鈴花は云った。
女心、乙女心とは斯くも読みがたく、理解しがたきもの。





















ゴコロ模様。

(それでも着実に貴方に惹かれ始めているのは、未だ内緒です)

















「やはり、俺はお前が好きだ」
「えと……その」
「未だ返事は良い。だが……――たまにはこうして抱き締めさせてくれると、心が安らぐ」

縋るように自分を抱き締める斎藤が可愛くて、 鈴花は優しく微笑んで抱きしめ返す。

「乙女心がもっと判ったら、ですよ……一さん?」







いずれ近くなる二人の距離。



















<了>

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戴き小説『月ノ光、太陽ノ影』(恋華・大v鈴)

鵺原 ユエさまのサイトさんより戴いてきました「xmas+お年玉フリー」小説で大石鍬次郎v鈴花のお話しです。

(HPとの背景色違いから勝手ながらタイトルの一部に薄く色付させて頂きましたv_v)

大石さんの囁く甘さがステキです((w´ω`w))

恋華シリーズや二次創作に興味のない方等は回れ右して下さい。

■□■

お話しの権利は上記の方にありますので二次配布やご迷惑になる様な行為は一切お止め下さい。

また 大人向けダメな方も回れ右でお願いします。。。












「大石さんって、月みたいですよね」
「何。どうしたの、イキナリ?」

暗い一室で若い男女が睦み合おうとする時、少女はおもむろに口を開いた。
相手の男――大石は愛撫を止めて 鈴花を見やる。

「そう、今日みたいな月の感じです」
「――ふぅん?」
「あんな妖しい感じが…ぁんっ」

仰向けの状態から見る月は逆さであったが、二人を照らす光は変わらず妖しく煌めいている。
黄色と橙色の中間色、そして今宵は満月だった。
月に気を取られていると開いた口を塞がれ、 鈴花は小さな嬌声を洩らす。
絡められた舌におずおずと応じれば、二人の口内からは猥らな水音が響いた。

「やけに積極的だね」
「久々ですから……ね」
「嫌いじゃないよ、そういうお前は」
「ぁ……んっ、ふ ぁ…!」

口付けの合間の駆け引き。
鈴花が強気に微笑めば、それが満更でもないように大石も笑う。
本当に久々の逢瀬。
任務で離れ、もうふた月も熱を溜め込んでいた。
焦がれていた口付けに、待ち望んだ愛撫……――。
何度抱いても馴染まず染まらない白い肌に赤い華を咲かせれば、首筋にはくっきりと跡がつく。
少し膨らむ美峰を揉みしだくと、それは大石の手の内で形を変える。

「ック、凄い締め付けだね、相変わらず」
「きゃ…ぁ、あぁっ……!」
「こんなにも濡れてるのにねぇ……」

鈴花の至るところに唇を寄せ、華を咲かす。
そして空いた片手で彼女の膣内を攻め立てる。
本当に待ち焦がれた行為に 鈴花は知らず知らずに蜜を溢れさす。
秘めた泉は噴き出し、大石の指をしとどに濡らした。
巧みに指を動かし、ざらついた一点を擦り上げれば、彼女はひと際嬌声をあげて膣内を締め付ける。
何度抱いても変わらぬ姿は生娘のようで飽きない。
大石は喉を鳴らして、行為を続けた。

「や…ぁ、ぁっ、ぁああああ……」
「嫌じゃないだろう。こんなに俺を求めてるのにさ」
「ひぃん!ぁ…おお、いしさ……!!」

不安そうに宙をう彼女の手を取って絡めて、開いた口を塞ぐ。
鈴花よりも大きな手が全てを包み込むように。
右手だけは攻め手を緩めず、中指で奥を突いてやれば彼女は軽く達した。
小さな嬌声を洩らし、膣は静かに収縮する。
浅い呼吸を繰り返す 鈴花を余所に、滾る熱を大石は彼女の中へ沈める。

「あっ、あっ……!痛ぅつ……」
「力を抜きなよ。俺も辛いんだから」
「きぁっ、ぁん、んんっ!」
「早くお前も俺のものに馴染めば楽なのにねぇ」

処女でもないのに 鈴花はいつも挿入時に破瓜のような痛みを味わう。
苦悶する彼女に構わず大石が腰を進めるのは常だった。
痛みで泣くのを必死に堪える 鈴花を見るのが好きというのは彼ぐらいだろう。
一番太い部分さえ入ってしまえば彼女は再び声高らかに啼くのだ。
目尻に溜まった滴を零れさせたいのか、大石はいつも挿入してから間を置かずに 鈴花を攻め立てる。
奥を突いては浅瀬に戻り、奥を突くといった繰り返しだ。
しかも巧妙に達さないように緩急をつけて 鈴花を焦らす。
そして今度は別の意味で 鈴花はいつも泣いて求めてしまう。
中途半端な熱は互いを苦しめるだけ。
大石の呟く言葉はどちらの為か。
鈴花のため?
それとも大石のためだろうか。
はたまた二人のため――……?

「ほら、イくよ」
「っ!!ひぃっ、あ……あ――――!」

ただ二人は求めあう。
重ねた掌だけは離さず、握り締めて。
最奥を突かれた瞬間、 鈴花は身を反らせ、先ほどよりも激しく果てる。
下肢から全身に向かって電流が流れたかのような快感だった。
収縮する膣に導かれるように大石は熱い迸りを彼女の子宮へ向けて流し込んだ。

月夜は照らす。
妖しい笑みを湛えるかのように、ただ静かに――。
そして二人は再び求めあった。
離れていた分の温もりを取り戻すように、心の不安を拭うように。






















太陽

(対極の存在が手を取り合って和と成す)






















「お前は太陽みたいな女だね」

自分の腕の中ですやすやと眠る 鈴花に、大石は小さく囁く。
大石が月ならば、彼女は太陽のような存在。
二人で一つの愛のカタチ。

「愛してるよ」

そっと 鈴花の瞼に唇を寄せ、大石もまた眠りにつく。
外の月は既に傾き、もうじき陽が昇りそうだった。
あたたかい光が差し込むのは、あと数刻先のこと……――。

















<了>

彷徨

(

さまよ

)

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「伯爵と妖精」戴き小説です*

あきさんのブログにて戴きました。一周年記念(おめでとうございますhappy01)のSSです。

エドリディ原作より先の二人の甘々なお話しです。大人向けOK!な方は素敵な二人のお話なのでいかがですか?

お話の権利は上記管理人様にあります。二次配布やご迷惑になる様な行為は絶対にお止め下さいね。楽しんで頂ける方・二次創作にご理解のある方は宜しければ↓へどうぞですconfident

・・・






「あっ…も、もうダメ」

「ダメ?」
「エドガー、やっ…これ以上ダメ…あ、あんっ」
「激しすぎた?」
「バカ!」
真っ赤になって怒るリディアの上から、エドガーはクスクス笑いながら体を浮かせてその隣へ寝転がる。
「ごめん、つい気持ちよすぎて」
言いながらエドガーはリディアを腕の中に抱きかかえた。
「エドガー!」
腕の中で暴れるリディアの額に、エドガーは唇を寄せた。
「愛しい奥様が回復する明日の夜まで我慢するよ」
「え!?
明日もするの!?という最後の驚きをぐっと堪えることには成功した。
「何だい?」
灰紫の瞳が面白そうに煌めき、からかうような色を帯びる。
「えっと、毎日こう、なの?」
リディアの言葉にエドガーはわざとらしくキョトンとしてみせた。
「毎日僕たちが愛し合うのか、ってこと?」
リディアは恥ずかしくなって俯いた。
しかし俯いた先にエドガーの引き締まった胸板が目に入り、リディアは逆効果に頬を色づかせた。
コクンと頷くとエドガーの笑い声が頭のてっぺんに響いた。
「リディア、僕たちは夫婦なんだから、毎日愛し合うのは当たり前なんだよ」
「そう、なの?」
半信半疑で顔を上げてくれたリディアに、エドガーは自信を持って頷く。
どうやらリディアは少し自分たちがやりすぎなのではないかと思っているらしかった。
確かにその通りなのだが、エドガーとしては世間一般を教える気は毛頭なかった。
リディアの髪を撫でる。
だが、リディアの体力も考えずに、求めすぎたかもしれない。
愛しすぎて、止められないのだ。
「リディア、僕に抱かれるのは嫌?」
気がつけばそんな質問が出ていた。
これで嫌と言われれば、多分一生立ち直れない。
捨てられた子犬のような顔をした自分が、リディアの金緑の瞳に写っていた。
「嫌じゃないわ」
じっと真っ直ぐに言うリディアにエドガーはいつもの調子を取り戻す。
「じゃあ好き?」
「えっ、えっと………好きよ」
まずい………完璧に火をつけられた。
「リディア、もう一回だけ」
「は?っきゃ!」
互いの唇が塞がれ、熱く絡み合う。
「ん、はぁ…エドガー」
「いい、よね?」
ペロリと耳朶を舐められればリディアにもう嫌という隙は与えられなかった。

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アラロス小説「あなたと晩ごはん」戴きました(カティアイ)

【宵ノ月】のはっさく様のサイト10万打フリーで戴きました「アラビアンズ・ロスト」のカーティス×アイリーンほのぼの二次創作・小説(ED後)です。

興味のない方・批判的な方は回れ右して下さい。

下記のお話の権利は上記管理人様にありますので二次配布やご迷惑になる様な行為はお止め下さい。宜しくお願いします。

遙か3・コルダ・アラロス・ハート&クローバーの国のアリス・フルキス…ゲーム作品の二次創作サイトさまです(ヒロインと誰かな設定)。興味を持たれた方は遊びに行ってみて下さいshine

はっさく様のお話はほのぼのだったりカワイかったりでどれも大好きですhappy0110万打おめでとう御座います。他のお話もまた読みに行かねばですnotes

***

『普通』の恋愛、『普通』の生活。

 ねぇ。
 子供の頃から望んでいた『普通』って、どんなものだった―――?



あなたと晩ごはん


 カタカタと小さな音を立て、火にかけられた鍋が揺れていた。
 台所に佇むのは、終始満面の笑みを浮かべる満足そうな男と、終始眉間に皺を寄せる不満そうな女の二人である。
「ねぇ……」
「はい、なんですか?」
「これって、何を作ってたか…覚えてる?」
 時は夕暮れ。
 カーティスの髪と同じ茜色に空が染まる、夕餉にはちょうど良いタイミングであった。
 そう。現状、鍋から上がる湯気だけを見れば、支度が終わりこれからご飯だと微笑むことも出来るのだろう。
 けれど―――。
「二人で作った初めての夕食なんて、本当に楽しみですよね」
「………楽しみ」
 思わず鸚鵡返しで呟いてしまうほど、現実を放棄したようなカーティスの言の葉に。困惑しきりの様子で眉間により深い皺を刻んだアイリーンが、じっと鍋の中身を見下ろした。
 まるで、魔女の鍋ように怪しげな色をしたシチューからは、焦げ臭いというだけで説明できない危険な悪臭が漂っている。
(……楽しみ?)

 これじゃ罰ゲームですよね、なら理解も出来る。
 が、楽しみ?

「まさか、これを食べる気なの?」
「変なことを聞きますよね? 食べないでどうするんですか?」
「どうするって、そりゃ…」
 捨てる以外に選択の余地など残されていない鍋を眺めながら、アイリーンは先ほど以上に眉を顰めカーティスを仰ぎ見る。
「ん、なんですか?」
「あんたって、そんなでも人間よね?」
「…貴女は、僕を何だと思っているんですか?」
「なにって…」
 冗談や揶揄いとは思えぬ真摯な眼差しで、突拍子もないことを問うてくるアイリーンに対し、呆れ顔で肩を竦めたカーティスがふぅと小さな息をついた。
「そこで止まらないでくださいよ」
「だって……」
 人間ならば。
 まずこの鍋の惨状を見た上で尚、楽しみなんて単語を吐き出せるはずがないのだ。
(人間…というより、動物なら?)
 どう考えても危険色、危険臭に彩られた物体。
 初めての料理だから―――で許されるような、生半可な状況ではない。
(うーん、ご飯ぐらい何とかなると思ったんだけどなぁ…)
 国王との賭けに負け、駆け落ち同然でギルカタールから逃れた二人が、ようやく見つけた安住できる場所。引越し―――という可愛い単語では語弊もあるが―――をしてようやく数日が経ち、初めて立った台所で生成された何か分からない物体の数々が、今二人の目の前に並んでいた。
(……甘かったわ)
 プリンセスとしても異色で異端なアイリーンは、だからといって『普通』の一般人でもない。
 王宮で、時折遊びで台所に立つ以外―――しかも爆破騒ぎで立ち入り禁止になった―――料理などしたことのない彼女にとって、レシピさえ呪文に見えた。
 間違いなく、難解な鍵開けや洞窟での戦闘の方がアイリーンの性分に合っているのだろう。
 そんな。
 女らしさをどこかに置き忘れてきた彼女が台所で悪戦苦闘しているところに、必然のごとく鼻歌交じりで上機嫌なカーティスがやって来て。

「あんたって、ずっと一人暮らしよね?」
「そんな当たり前のことを聞かないでくださいよ。僕にとって、貴女が…初めての相手なんですから」
 と、気持ち悪い上ツッコミを入れる気力も失う言葉を並べ立て、一人もじもじと照れているカーティスに対し、意識せずとも盛大なため息が零れ落ちる。
「どうしたんですか、アイリーン?」
「どうしたもこうしたも……」
 流石は大陸随一と呼ばれた暗殺者。
 器用に野菜を切り並べたまではプロ級の腕前を見せていたカーティス=ナイルだったが、そこからの散々たる状況はアイリーンと大差なく。
「なんで一人暮らし歴の長いあんたが、シチューの中に大量の砂糖とか放り込むのよ……」
 料理初心者の自覚があるアイリーンさえ悲鳴を上げた少し前の惨劇を思い出し、彼女は唸るよう頭を抱えた。
 シチューがシチューの素から作られるのではなく、元々は別の形をしていることを知ったのは、アイリーンも今日が初めてだったけれど。
 それでも、大量の砂糖が入らないことぐらいは分かった。
「あんたの料理センスは、私以下だわ」
「酷いですね。そんなことないですよ? アイリーンよりは、器用に調理しましたし」
「あんたが役に立ったのは、刃物持たせたときだけじゃないっ!」
「ええ。それでも貴女よりはマシです」
 まったく、どこの子供の喧嘩だという言い合いを続ける二人が、お互い退く様子なく睨み合う。
 五十歩百歩―――。
 間違いなく『普通』に料理の出来る人間から見れば、どっちも素人以下であることくらいは分かってるけれど。
 それでも『普通』を望むアイリーンとすれば、カーティスだけには負けられない。
(だって……)
 料理で夫に負けるなど、妻の体裁云々というよりも何よりも。
『普通』の人間なら、元暗殺者より料理ぐらいできるのが当たり前のはずなのだ、きっと。
「私は、自分でご飯作ることなんて今までなかったんだし…今はまだ、仕方ないのよ! 機会があったのに、そんな惨状のあんたよりはずっとマシのはずだわ」
 なんて。
 悔し紛れに自分が『普通』じゃないことを曝け出し、不本意そうに唇を尖らせたアイリーンがふいと顔を背けた。
(これじゃ、自爆してるだけじゃない…)
 まさに今、自分で堂々と『普通』を望んでいたくせに『普通』になる努力をしていなかったと認めたようなものである。
 プリンセスという地位の上で胡座をかいて、偉そうに理想を並べ立てていただけ。
『普通』の生活をする時点になって初めてそのことに気付いたと、アイリーンは己の言葉に打ちひしがれるよう自嘲気味な笑みを零した。

 分かっている。
 分かっていながら―――。

「私の方が……」
 と、どこまで強がる気なのか。
 思わずそう呟いたアイリーンの言葉に、カーティスの手が彼女の髪に触れる。
「確かに。僕は天涯孤独の身の上なので、貴女の指摘は正当だと思います。けれど生憎、僕は今まで食事に重点をおく生活などしたことがなかったもので」
「………って、まさかリンゴしか食べてなかったとか言わないわよね?」
「さぁ?」
 あとは、アルコールがあれば生きていけるとか。
 そんな洒落にならないことを言い出しかねないカーティスが、肯定とも否定とも取れる笑顔を浮かべ、アイリーンを見下ろしていた。
 リンゴとアルコール。あり得るどころか、毒薬のコレクションと拷問道具、そして僅かな書物というカーティスの部屋を思い起こせば、不思議など何もない現実と思えるから性質が悪い。
「だから、あんたってこんな細いんでしょ!」
「失礼ですね。僕はこう見えて筋肉質なんです。別に、細いわけではありませんよ?」
「細いって…」
 頭上に置かれていた彼の腕を掴みながら、その主を睨み上げようとした瞬間。驚いたよう目を瞬かせたアイリーンが、どこか寂しげに微笑むカーティスの姿に息を飲んだ。
「それに……」
「………?」
「いつかどうせ死ぬのだから、食事なんて別にどうでも良いとそう思っていました」
 仕事柄、こうして家でゆっくり食事を取ることなど稀でしたしと。それが当然のことのごとく笑ったカーティスの朱の三つ編みが、微かに揺れる。
 スラムで生き抜くため、必然のように暗殺者となったカーティス。
 王宮で自分が過ごしていたように、家族団欒の食卓などあるはずもない彼の生活を思い出し、息を飲むよう唇を噛み締めたアイリーンが、掴んだままのカーティスの腕に力を込める。
「私……」
「どうしたんです、変な顔をして? 僕は、今貴女と一緒にこうして料理を作れることが嬉しいんですよ? 笑いながらでも、怒りながらでも。こうして二人で過ごす時間は、とても楽しいものですからね」
 それに、これも貴女が初めての経験ですしなんて。
 何故かまた照れたように笑うカーティスの腕を引き寄せたアイリーンが、どこか泣き笑いのような表情を浮かべ、俯きながら眉尻を下げた。
「アイリーン?」
「私…誰かのためにご飯作ったのなんて、初めてなんだから……」
 あぁ、本気で泣きそうだ。
『普通』だからとか、『普通』じゃないからなんて関係なく。
 私は、今幸せだとそう思うから。
「一緒に、食べましょ?」
 きっと胃薬だけじゃなく、色々と必要になり数日は寝込むことになるだろう。
 けれど―――。

 それでも寝込むことさえ嬉しいと思える食卓を、二人で囲みしましょう。
 そうして、これからも。
 初めてを当たり前にして、幾夜も幾夜も幸せを重ねて生きていきましょう。

 そう告げて。
 笑いながら口づけを交わした二人の眼前で、カタカタと夕餉を待つ鍋が嬉しそうな音を立てているのだった。


 あなたと晩ごはん。
 それが、二人の『普通』の幸せに変わるまで―――。

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「恋華 花柳」小説戴いてきました♪(大輪です)

イラストの権利は当方ではなく各管理人様にあります。二次創作にご理解のない方は回れ右で!楽しんで頂ける方のみステキ小説ご覧になっていって下さいwink

二次配布等ご迷惑になる様な行為はお避け下さい。宜しくお願いします。

***

『刹那い華』の黛くららさまより3周年記念配布フリーの「恋華 花柳」の小説を戴いてきましたheart02

(こちらを併せて同時に3作戴いていますconfident恋華キャラはどのキャラもオイシイheart02)

「幕末恋華新選組&花柳剣士伝」の二次創作サイト様です。下記は大石×輪ですheart彼の様な人が本気の本命出来たらホントに凄そうです///(色々と/笑)

大石さんの苦労はきっとこれからsmile

<鈍い女>

 

「動きづらい・・・。」

珍しく普通の着物を着ている倫。
いつもの軽装に比べると動きも制限されてしまうため少し窮屈に感じてしまう。
なぜ着慣れない着物で町を外に出るはめになったのか。
それは・・・・・・。

 

 

「ねえ倫ちゃん、悪いんだけどお使い頼まれてくれないかしら?」

両手を顔の前に合わせながら、おこうは申し訳なさそうに頭を下げた。
倫はいいですよ、と快く引き受けた。

「ありがとう!こ患者さんの忘れ物を届けてほしいんだけど・・・。」

「わかりました。」

「いま地図を描くから。あ、そうそう。ちゃんと普通の格好していってね。」

「え?何でですか?」

「ちょっとね、服装とか身だしなみにうるさい方なのよ・・・だから、ね?」

「はあ・・・。」

 

 

というわけで現在に至る。
さっさと済ませてしまおうと倫は道を急ぐ。
しかし、窮屈さに気をとられて、自分の後をつけてくる気配に
全く気付かなかった。

「えっと、確かここを左・・・。」

地図で道を確認しようと止まった時、ふと目の前に影が出来る。
前を向くと、二人の男が立ちはだかっていた。

「お嬢さん、お困りかい?」

「迷子?俺たちが案内してやろうか?」

「・・・いえ、けっこうです。」

ニヤニヤとだらしのない、下卑た笑いを浮かべる男たちに呆れながら断った。
相手をしないに限る、そう思ってすぐ立ち去ろうとしたのだが。

「おっと、つれないことを言うなよ。」

素早く道をふさがれる。愚鈍そうなのにこういうことでは機敏なようだ。
面倒くさいのに絡まれてしまったなと、倫はため息をついた。
幸いたいした使い手ではなさそうだし、隙を見て当身をくらわせれば逃げられるだろう。
倫はそっと気付かれないように身構える。

「さあてと、俺たちと楽しいとこに行こうか?」 

ひとりが倫に手を伸ばしてきた。
今だ!と倫が当身をくらわせようとした、その時だった。

「おや、奇遇だねえ。」

後ろから聞きなれた声がして、倫は動きを止める。
少し気だるい感じのこの声、間違いない。

「大石さん・・・。」

「やあ倫。珍しい格好で何してるわけ?」

「珍しいって・・・。」

似合ってませんよどうせ・・・と倫は少し落ち込む。
そこにいたのは新選組隊士、大石鍬次郎。
たまに花柳館に訪ねて来る人物だ。
見たところ、どうも巡察の最中らしい。

「おこうさんに頼まれてお使いに・・・。」

「ふーん、ご苦労なことだねえ。で、あれは?」

「あれ?」

大石が顎で指したほうを見ると、軟派男たちが大石を睨みつけていた。

すっかり忘れてた・・・

「てめえ!その娘は俺たちが先約だぞ!」

「そうだ!とっとと消えうせろ!」       

ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる男たちに倫はまた大きくため息をつく。
ふと大石を見ると、大石も馬鹿馬鹿しい、と言いたげな表情をしていた。

「うるさいねえ、もう少し静かにしておくれよ。それとも・・・」

大石はニッと口の端を上げる。
嫌な予感が倫の胸をよぎった。

「そんなに俺に斬られたい?」

倫の前に立ち、刀を抜く大石。
男たちはヒッと体を強張らせて動きを止めた。

「大石さん!」

「さてと、どっちから斬ろうか。俺が選んでやってもいいけど?」

倫の声を無視して、大石は男たちに近づいていく。
一歩、また一歩。
ゆっくりと、大石は距離を縮めていく。
男たちは恐怖で身動きができないようだ。
あと数歩で大石の間合いに入ってしまう、倫は大石の腕に飛びついた。

「大石さん!やめてください!」

その声にハッと正気に戻った男たちは、悲鳴をあげながら一目散に逃げていった。
倫はホッと胸を撫で下ろし、大石から離れる。

「邪魔しないでくれよ。」

「いいえ、邪魔します。」

大石の鋭い視線に負けずに、真っ直ぐに睨み返す倫。
大石はククク・・・と不適な笑みを浮かべる。

「いいねえ、その目・・・。」

またわけのわからないことを、と倫は眉をしかめた。

「・・・私は急ぎますからこれで。ありがとうございました。」

早口で挨拶をして小さく頭を下げる。
さっさとこの場を立ち去ろうと大石に背を向けた。が・・・

「待ちなよ。」

抑揚のない声で大石は倫を呼び止めた。

「暇だからついてってやるよ。」

「・・・は?」

「聞こえなかったわけ?ついてってやるって言ったんだよ。」

いきなりの大石の申し出に倫は驚いて目をパチクリさせる。
何を考えているのか、相変わらずこの男の思考がわからない。

「大体、そんな格好で歩くなんて自覚がないにもほどがあるんじゃない?」

「どういう意味ですか?」

「・・・はあ、タチが悪いね。」

「え?」

「まあいい。行くよ、倫。」

倫の持っている地図を取ると、大石はスタスタと歩いていく。

「ま、待ってください大石さん!」

呆気に取られていた倫は、慌てて大石の後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく、鈍い女だね。

大石は横を歩く倫を見ながら心の中で呟いた。
女に興味がないわけではないが、あるわけでもない。
しかし、倫だけは別だった。
自分に物怖じしない女はあまりいない。
大石が知っている限り二人だ。
一人は新選組の女隊士、そしてもう一人は、この倫。
倫はさらに、自分を嫌いながらも、自分の本質を無意識に見抜いている。
大石は初めて、『人』に興味を持った。

それにしても、自分の見た目に無頓着だとは思っていたが、ここまでとは。
綺麗な娘らしい着物を着て髪を整えた倫を、大石は素直に綺麗だと思った。
街で倫を見かけたとき、すでに何人かの男が倫の後をつけていた。
大石が現れたことで隠れていた他の男たちも去ったようだが、
また倫を一人にすれば群がってくるだろう。
倫は強い。絡まれたところで特に問題はないはずだ。
先ほどだって、自分が出ずとも余裕で倫は逃げられた。
しかし、この面白い女を易々とあんな下衆に触れさせるわけにはいかない。

「今度は焦らさずすぐ斬るから安心してよ。」

「安心できません!!」

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「恋華」小説戴いてきました(藤鈴です)

イラストの権利は当方ではなく各管理人様にあります。二次創作にご理解のない方は回れ右で!楽しんで頂ける方のみステキ小説ご覧になっていって下さいwink

二次配布等ご迷惑になる様な行為はお避け下さい。宜しくお願いします。

***

『刹那い華』の黛くららさまより3周年記念配布フリーの「幕末恋華」シリーズの小説を戴いてきましたheart02

(他のお話も戴いてきましたv)

「幕末恋華新選組&花柳剣士伝」の二次創作サイト様です。下記は藤堂×鈴花です*平助ED後な感じ。いい人ーーーって感じのキャラでいいですよね・彼^^

いつか不安を乗り越えて…。そんなお話しです。

<捕らわれて>

 

「う・・・。」

ふと目を覚ました平助は、ぼんやりとしながら窓を見る。
朝陽は差し込んでいない。まだ夜明けまで時間があるようだ。

「ん?」

段々と覚醒していくと、昨夜眠るときにはなかった温かさを感じて
平助は目線と落とした。
真っ先に目に入ったのは、色素の薄い細い髪。

「鈴花さん・・・。」

自分にぎゅっと抱きついている鈴花だった。
少し体勢を変えて鈴花の顔を見てみる。

やっぱり・・・。

切なそうに目を細めて、平助は鈴花の頭を抱え込むようにそっと抱き寄せた。
一緒に暮らし始めてからも、時々鈴花はこうやって不安そうな、泣きそうな顔をして
無意識にこういう行動をとることがある。

まるで、平助をどこにも行かせまいとしているようだ。
自分の腕の中に閉じ込めようとしているかのように、平助を強く抱きしめて
起きるまで決して放そうとはしない。

油小路の事件で味わった、愛しい人を失う恐怖。
表面上は回復していても、心の奥底にはまだ残っているのだろう。
鮮明に、そして鮮やかに。
それは・・・平助とて同じだった。

「大丈夫だよ、鈴花さん。大丈夫。ずっと一緒だって言っただろ?」

鈴花に言っているようで実は自分に言い聞かせているのだと、平助は苦笑する。
しかし嘘ではない。これから先、自分たちが離れることなど決してない。
いくらあのときの恐怖が蘇ろうと、自分たちは生きているのだ、生きていくのだ。
きっといつか、色褪せて消えていく。

平助は鈴花の額に唇を軽く押し当てた。
身じろいだ鈴花の表情が和らぐ。
きっと数刻後には丸くて大きな目を開けて、この状況にいつものように
顔を真っ赤にして慌てるのだろう。
可愛い鈴花の姿を思い描いて、平助はクスッを笑みを零す。

 

 

 

だけど

「それまでは、僕にも君を閉じ込めさせて」

大好きな君をこの腕の中に。

 

君は僕を、僕は君を。

お互いの腕の中に捕らわれて、恐怖は安らぎに変わる。

夜明けまであと少し、どうか幸せな夢を彼女に・・・。

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「恋華花柳」小説戴いてきました*(永鈴&三輪です)

イラストの権利は当方ではなく各管理人様にあります。二次創作にご理解のない方は回れ右で!楽しんで頂ける方のみステキ小説ご覧になっていって下さいwink

二次配布等ご迷惑になる様な行為はお避け下さい。宜しくお願いします。

***

『刹那い華』の黛くららさまより3周年記念配布フリーの「恋華 花柳」の小説を戴いてきましたheart02

(他のお話も戴いてきましたv後日載せたいと思います)

「幕末恋華新選組&花柳剣士伝」の二次創作サイト様です。下記は永倉×鈴花夫婦+三樹×輪です~*男性陣がカワイイです(>▽<)

【未来へ】

ある天気の良い日のこと。

江戸、松前藩邸の門の前に、大きな声が響き渡った。

「ごめんくださーい!!」

「はい、何か御用ですか?」

庭を掃いていた女中が答えてやってくる。

「すみません、永倉新八さんはご在宅でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新八さん!!」

いつものように執筆活動に励んでいた永倉は何事かと手を止めた。

それと同時に妻の鈴花が息を切らして駆け込んできた。
ただ事ではない様子に、永倉は眉をしかめる。

「い、今客人が来てるって言われたんですが・・・」

「客人?誰だ。」

「・・・三樹さんです・・・。」

鈴花が呟いた名前を聞いて、永倉は警戒を解いた。

三樹とは以前、街中で偶然再会した三樹三郎のことである。
もと新選組参謀の伊東甲子太郎の実弟であり、組長も務めた男だ。
再会したときに居場所を教えたから訪ねてきたのだろう。
しかし、新選組を脱退後は敵として対峙してしまった。
鈴花が懸念するのも無理はない。

「どうしましょう?」

「どうもしねえよ。せっかく訪ねてきてくれたんだ、喜んで迎えようぜ。」

「ですけど・・・。」

「心配ねえよ。それとも、お前はあの三樹がだまし討ちなんてすると思うか?」

「・・・思いません。少なくとも、私の知る三樹さんは。」

だろ?と永倉は優しく笑って、あやすように鈴花の頭を撫でた。
夫婦となっても、いまだに永倉はこうして鈴花を子供のように扱うことがある。
昔なら嫌がっただろうが、今は嫌ではない。
永倉が自分を愛おしいと思っているが故の行動であることがわかっているからだ。
自分の考えすぎであって欲しい、いや、きっとそうなのだと言い聞かせて、
鈴花は永倉とともに客間へと向かうのだった。

 

「よう三樹!よく来たな、嬉しいぜ。」

「こんにちは、永倉さん、桜庭さん。あ、今は桜庭さんも永倉さんでしたね。」

そういって微笑む三樹は二人のよく知っている三樹だった。
優しくて争いを好まない、あの三樹だ。
だが、やはり三樹もあの激動の中を生き抜いた男の一人である。
かつては見られなかった風格が備わっていた。

「ははっそうだな。で、今日はどうした?」

「実は、再会したことを妻に言ったらぜひ会いたいと言いましてね、連れてきたんです。」

「へえ!お前も所帯を持ったのか。」

「どんな方なんですか?奥様は。」

「二人もよく知っている者ですよ、入ってきなさい。」

失礼します、と可愛い声がして襖が開いた。
そこにいた予想外の人物に、永倉と鈴花は驚いて目を見開く。

「り、倫さん!?」

「ご無沙汰しております、永倉さん、鈴花さん。鈴木三樹三郎の妻の倫です。」

「島原のお嬢ちゃんじゃねえか!こりゃ驚いたぜ。」

島原の花柳館の門下生だった志月倫。
新選組の屯所にも時々訪れていた彼女と、永倉と鈴花も話をしたり街に出たりしたものだ。
倫もまた、少女の面影を残しながらも美しい大人の女性へと成長している。
驚く永倉と鈴花を見て、三樹と嬉しそうに微笑んでいる倫の姿に、
鈴花の中に残っていたわずかな警戒心は跡形も無く消え去ってしまった。

「これお土産のお団子です、鈴花さんお好きでしたよね?」

「わあっ!ありがとう!ちょっと待っててね、お茶のお代りも持ってくるわ。」

「手伝います。」

「いいのよ、あなたはお客様なんだし、すぐそこだから。」

「いえ、させてください。鈴花さんと久しぶりにお話もしたいし。」

「そう?じゃあお願いしようかな。」」

鈴花と倫は楽しそうに部屋を出て行った。
嬉しそうにはしゃぐ鈴花の姿を見て、三樹は鈴花の警戒が解けたことを察した。

「まったく、いつまでたっても子供っぽくて参るぜ。」

「そこが桜庭さ・・・鈴花さんのいいところじゃないですか。」

「お嬢ちゃんのほうが落ち着いて見えるしな、どっちが年上なんだか・・・。」

「ははは。」

ふと、沈黙が訪れた。
自分達が望んだことではないとはいえ、敵となって戦ったことは事実。
でも目の前の男に対して恨みや怒りというような感情は一切ない。
言いたいことはたくさんある、だが、何から言えばいいのだろうか。
永倉と三樹の間に快でも不快でもない、妙な空気が流れる。

先に沈黙を破ったのは永倉だった。

「すまなかった。」

「!・・・いいえ、鈴花さんが怪しむのも当然です。」

「いや、そのことだけじゃない。」

「永倉さん・・・。もういいんですよ、僕は新選組を、皆さんを恨んでなどいません。」

「わかってるよ、お前の顔見りゃな。俺も伊東さんたちを憎んでも恨んでもいねえ。」

「永倉さん・・・。」

永倉は辛そうに顔を歪めて頭を下げた。

「伊東さんのことは、俺たちが詫びなきゃならねえ。会談は成功したんだ、なのに・・・。」

慌てて三樹は永倉の言葉を遮った。

「頭を上げてください永倉さん!わかっています、わかっていますとも。
兄も平助君も服部さんも、皆さんのお気持ちは痛いほどわかっているでしょう。
私のほうこそ、篠原さんの暴走を止められなかった・・・。」

「それはお前の責任じゃないだろ。」

「それを言うなら兄のことだって永倉さんの責任ではないでしょう?」

「しかしだな・・・。」

「二人とも、もう良いではないですか。」

倫が優しい声で二人を諌めた。

「生き抜いた私達がそうやっていつまでも過去に捕らわれていたら、
伊東さんたちに申し訳ないじゃないですか。過去は変えられません。」

「倫・・・。」

「二人で前に進もうって、約束したでしょう?三郎さん。」

「倫さんの言うとおりだわ。」

倫の言葉に鈴花も賛同する。

「私も正直、さっきまで昔のことで三樹さんを疑って警戒していたわ。
でも、いつまでも過去を引きずっちゃいけない。
忘れてはいけないけど、これからを一生懸命生きていかなきゃ。そうでしょ?」

「鈴花・・・。」

妻たちのほうが自分たちよりも強く、逞しいようだ。
目と目でそう会話した永倉と三樹は苦笑しあう。
そうだ、お互い悟っていることを謝りあったことで無意味なことなのだ。
これから自分たちは、未来へと歩んでいくのだから。

「さっ湿っぽい話はここまでにしましょう!」

鈴花は一回手を打ち合わせてそう言うと、お茶と団子を並べる。
再会を祝うささやかな茶会が始まった。
二組の夫婦は、積もる話を心行くまで語り合う。
永倉と鈴花は甲州勝沼での戦いのあとに近藤と袂を分かち、靖兵隊として戦っていたことを。三樹と倫は鳥羽伏見の戦のあと赤報隊と共にいたこと、明治政府に受けた仕打ちのことを。

そして、一番話しに花が咲いたのは、お互いの馴れ初め話だった。
意識し始めた頃のことや想いが通じたときのことなど、照れながら話していたのだが、
ふと永倉はあることを思い出した。

「そういやお前、おこうって女が好きだったよな?」

「え?ええ・・・。」

「屯所で酔っ払って叫んでたもんなあ、おこうさんをこの世で一番愛してます!!とか。」

隣にいる倫の周りの温度が少し下がったような気がして、三樹の背にゾクッと悪寒が走る。
倫の沈黙と微笑みが妙に怖い・・・。三樹は慌てて早口で反論する。

「む、昔の話ですよ!永倉さんこそ、京都にいた頃は
馴染みの方のところによく行ってたじゃないですか!小常さん、でしたっけ?」

「小常さん・・・?」

初めて聞く女性の名前に、鈴花のこめかみがピクッと動いた。
鈴花の笑顔の妙な迫力に、今度は永倉が冷や汗を流す番だった。

「おまっ!それこそ昔の話じゃねえか!!」

「言いだしっぺは永倉さんでしょう!!
大体、昔はどうあれ、今もこれからも僕は倫ひとすじなんです!!」

「んなの俺だって同じだ!!鈴花以外の女なんざいらねえよ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クスクス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「「え?」」

肩を震わせて今にも大笑いしそうなのを必死で堪える鈴花と倫。
我に返った永倉と三樹は、大々的に妻に告白をしてしまったことに気付いた。

「ああああの、これはだな・・・」

「えっと・・何というか、その・・・今のは・・・」

慌てふためく二人を見て、鈴花と倫は頬を染めながらそれぞれの夫に微笑んだ。

「ありがとうございます、新八さん。私も新八さんだけですよ。」

「三郎さん、私も貴方ひとすじですから。」

ああやっぱり、この可愛い妻には敵わない。
お互い真っ赤になっている顔を見合わせて、永倉と三樹は苦笑する。

「意外と似たもの同士かもしれませんね、僕たち。」

「そうかもな・・・。」

4人の楽しい笑い声は、夜遅くまで松前藩邸に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、夕飯までご馳走になってしまって・・・。」

「気にすんなって。俺たちは楽しかったぜ、なあ?」

「ええ、またいつでも遊びに来てくださいね、三樹さん、倫さん。」

「永倉さんと鈴花さんもうちに来てくださいね、今度は私が腕を振るいますから。」

「おう、楽しみにしてるぜ!」

それでは、と深々と頭を下げて帰っていく三樹と倫。
永倉と鈴花は、二人の姿が見えなくなるまで見送っていた。

「ねえ、新八さん。」

「ん?」

「今度のお花見は、三樹さんたちも誘いませんか?」

 「そりゃいいな、そうしようぜ。」

じゃあ計画を立てなくちゃ、と弾みながら藩邸内に戻る鈴花。
鈴花を追う永倉もまた、楽しそうに胸を弾ませていた。

 

             

             

 

             

 

 

 

 

「楽しかったですね、三郎さん。」

「ああ、やっぱり来てよかったよ。」

そう言って穏やかに笑う三樹の手を、倫はそっと握った。
三樹は愛おしそうに目を細めると、その小さな手をぎゅっと握り返すのだった。

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戴きBASARA小説「届け声よ、カナリアへ。」(元親×ヒロイン)

-夢喰いムシ-の鵺原ユエさまより一周年記念の無料配布で戴きました。一周年おめでとうゴザイマスbirthdaywine

お話はBASARAの元親とオリジヒロインさんのカナリアシリーズです。お気に入りのシリーズのひとつです。救いの糸口が見えてきた感じにホッとしましたconfident

シリーズの前作が気になる方は鵺原さんのサイトへ走ってみて下さいhorsedash

注意)お話の権利は当方にはありませんのでお持ち帰りや二次配布等ご迷惑になる行為は絶対にお止め下さい。

同人や二次創作に理解のある方・興味のある方はどうぞ下記もご覧になってみて下さい。

***





犯してはいけない罪を犯した。
開いていた扉を自ら全て閉じてしまった。
もう、取り戻すことの出来ない過ち。
一瞬がとても重く感じられる。
それでも……目を逸らすことの赦されない現実があるのだ。










「気鬱、ですな」
---またか」
「はやり…この時期になると躯が本能的に察して敏感なようです」
「そうか……」

暗い影を落とす元親に、侍医は励ますように言葉を続けた。

「いつにも増して情緒不安定なのは事実ですが…だからこそ、奥方の傍に居てあげて下さい。

 元親さま---貴方の真心を示すことが何よりも大切なのです」
「…わーってるよ」
「加減は難しいものですな。だけれど、これは貴方様にしか出来ないこと」

“良いですね”、と念を押して侍医は部屋から下がる。
広い部屋に元親とキユのみが残された。
キユは元々白い肌であったのに、更に白くなって寝入っている。
以前の傷は既に完治していて、それこそ傷一つない珠の肌と形容するに相応しかった。
まるで人形のようで、けれども息はある。ただ、それだけ---

「キユ」
------------
「キユ……っ」

決して呼びかけに応じられることはない。
意識があろうとなかろうとそれは変わりないだろう。
元親はそれこそ判り切っているのに、何度も繰り返し名を紡ぐ。
もしかしたら、の可能性を今も捨て切れないのだ。
あの時、手を放してしまったのは間違いなく自分。
云い分は云い訳にしか聞こえないから云うのを止めた。

「キユ…キユ……」

例え赦されなくても、己はずっと自分を呪い続けるであろう。
彼女の為に最善を尽くす、それが答え。
全ての真実から目を背けない。
心を八つ裂きにされそうな思いを抱こうと、
愛する彼女が負った傷に比べたら安いものである。
彼女の心の傷は今の彼女の存在そのものだから。
それだけの報いを自分は受けているのだ。
物憂いな表情でキユを見つめていると、突然彼女は魘され出した。
苦しげに悶え、目尻には涙を浮かべている。
夢見が悪かったのか、苦悩しているように感じられた。

「オイ!大丈夫か、キユ…!?」

慌てて元親が声を掛けるが、キユは夢と現で混乱しているようだった。
瞳を開けても元親を視界に映さず、ただパニック状態を起こしているようである。
呼吸も平常よりも速く荒い。
このまま行くと過呼吸になり兼ねない。
始めは動揺した元親であったが、意を決して彼女を起こして抱き寄せる。
---
力強く、安心させるように。そう、まるで全てを包み込むように。

「大丈夫だから、暴れンなって」
----~~ッ!!」
「俺はもう…ぜってぇお前を傷つけネェから……」

錯乱状態のキユに、元親は何度も囁き掛けるように言葉を紡ぎ出す。
引っ掻かれて腕や顔も傷がついたが、それでも彼女を抱き締める腕は緩めなかった。
ただただ、安心させるようにしっかりと腰に手を回している。
泣きそうだった、と云えば事実である。
けれど今は弱くある時ではない。
彼女の為に出来ることを最大限自分自身でやらなければならなかった。

「俺はお前を……キユを愛してンだ……ッ」
------------。」
「ずっと…ずっと傍に居っから、泣くなよ…」

泣きそうなのは自分だなんて云えない。
だけれど静かな部屋には一つの鼻の啜る音が響く。
ギュッと彼女を抱き締めると、彼女は徐々に躯の力を抜いていった。
弛緩したような状態でキユは元親の鼓動の音を聞いていた。
トクン、トクンと一定の律動が鼓膜に響いている。

「俺には…お前が何よりも大切なんだよ……」

それは心の底から叫ぶように絞り出した言葉。
キユの肩に顔を埋めながら、元親は呟いた。
すると、今まで無反応であった彼女がそっと彼の腰に手を回し出す。
その手は実にたどたどしいものであったけれど、確かな温もりは其処にあった。














届け声よ、




カナリアへ。













カナリアの声は未だに戻らない。
心も当時のまま、時を刻むことを止めてしまった。
だけれど彼女に声を掛け続けることを止めはしない。
いつかきっと届くと信じて、希望を捨てずに寄り添おう。
かの時見た鴛鴦を夢見て。






















<了>

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『遙か』戴き小説「冬籠り」<ヒノエv望美>

阿蒼さまのサイト「3min.」よりお正月配布フリーのイラストとSS(ヒノエ/ヒノ望)を戴きました^^

ヒノエは乙女ゲーで火属性キャラは中々始めから恋の対象にはならない(お子様的熱血が多い気がするから?/微苦笑←キャラ的には嫌いじゃないのですけどねぇ??)自分でも結構お気に入りでさくさく落としにかかったお相手です♪熊野仲間いいですよね!

ヒノエはストレートな甘さがいいですv そして微妙に天然な望美。甘い雰囲気がステキです。

下記の作品の権利は当方ではなく上記管理人様にあります。無断お持ち帰り等の二次配布やご迷惑になる様な行為は絶対にお止め下さい。ご理解のある方のみどうぞ~*(注:SSは微艶です。「オトナOKだ!の方のみ」どぞ/笑)

2008hinos












 冬籠り 
(ヒノエ×望美/あまあま/無印ED後/少々艶っぽいSS)



寒い寒い熊野の冬。


山の頂上から吹く風には、ちらちらと白銀が混じり、
枯れた木々に凍てついた衣を贈る。

陽も落ちて、月明かりだけが頼りの視界。

なのに、粉雪だけはやけにはっきり見えていた。

冬の透明な空気が、
夜空をより深い漆黒へと変えているせいかもしれない。

床に座り、欄干にもたれて、庭の景色を一人眺めていた望美は、
この世界の自然の厳しさを、改めて実感していた。


「体の芯から冷える寒さ……なんだよね」


白い息を零して言って、
肩掛け代わりに羽織っていた着物の前を、しっかり重ねた。

怨霊、そして平家との戦いが終わり、
この世界に、ヒノエの元に残る事に決めてから、初めての冬。

ここでの生活は、随分慣れたはずなのに、
自然の素の姿を見せられると、
文明の機器に囲まれていた頃を、つい懐かしんで、求めてしまう。


「エアコンとか、ホットカーペットがここにあればなぁ」


ぼやいて、手に『はぁ』と息を吐いた。
一瞬だけ掌に温もりが集まり、すぐに消え、指先から冷気に縛られた。

寒いのなら、部屋の中にいればいい。そう思っていても、
仕事で遅くなっているヒノエを待つ、寂しい時間を埋めたくて、
何となく、景色を眺められるこの場所を選んでしまう。


「まぁ、部屋の中にいても、外にいても、
あんまり寒さは変わらないし、
だったら綺麗な雪を見ていた方が良いよね」


ここにいる理由を自分自身に納得させ、
踊る雪達の舞台を観ていると、くすっと笑う気配が、背後から伝わった。

振り返れば、笑顔のヒノエがいる。


「ヒノエ君!帰ってきたんだね!」


嬉しくて、嬉しくて、
自分でも分かるほど、表情を輝かせてしまう。


「遅くなって悪かったね。姫君」


言いながら、歩みを進め、
当たり前のように、ヒノエは望美の隣に座る。


「床は冷たいよ。いいの?」

「そうだけど、姫君の隣が良い。
独り言もよく聞こえそうだしね」

「独り言って……、いつから後ろにいたの?
すぐに声をかけてくれれば良いのに!」


寂しかったんだから。
という言葉は心の中に留めて、軽くヒノエを睨めば、
肩に腕をまわされ、ぎゅっと引き寄せられた。


「オレがいなくて寂しい。そんな顔を見ていたかったからね」

……ヒノエ君って、結構、意地悪だったんだね」

「意地悪は心外かな。
寂しがるって事は、姫君に愛されている証拠だろ?
それを噛み締めていたんだから、許して欲しいね」


覗き込んでくる瞳が、思いのほか真剣で、
一瞬、その強さに意識を奪われ、我に返り、
どぎまぎしながら頷いた。


「そういえば、さっき『えあこん』と、
『ほっとかーぺっと』があればって言ってたね。
それはどんな物なんだい?姫君の世界のものだろ?」

「あ、うん。そうだよ。
うーん、その二つは、あったかい風が出る箱と暖かい敷物。
って感じかな」

「へぇ、それは面白そうだね」


どういう物なのだろうと、考えを巡らせているヒノエは、
年相応の顔で、望美の頬が思わず緩んだ。


「外がどんなに寒くても、
それがあれば大抵の部屋は春みたいになるんだよ」


更に説明を加えると、ヒノエの瞳の中に、好奇心の文字が瞬いた。


「外は雪が降るのに、邸に戻れば春。
そんな『宝』があるなら見てみたいね」

「私の世界に簡単に行ければ、直ぐに持ち帰るんだけど、
それはちょっと無理だし……。」


残念。


溜息と共に零せば、ヒノエの指先に僅かに力が篭った。


「ヒノエ君?」

「ん?」


どうしたのだろうと名前を呼んだのに、
逆に小首を傾げられる。

暫く見つめ合って、言葉を掛けられるのを待つけれど、
ヒノエは口を開かず、その代わりに、
望美が羽織っていた着物を開いて、身を滑らせ、
一緒に布地に包まった。


「わ!ヒノエ君!
寒いのなら、寒いって言えば、ちゃんと着物を分けてあげたのに。
いきなり、冷たい空気が入ったら驚くじゃない」


口を尖らす望美。

を放って、
ヒノエはこれ以上密着出来ない程、ぴたりと体を寄せた。


……見たいとは思うけど、どうしてもってわけじゃない。
それに、春になる『宝』は、ここには必要ないかな」

「え?……こんなに寒いのに?」

「あぁ、必要ないね。
こうして温もりを分け合えれば、オレは十分。
だから、姫君が、元の世界にそれを取りに行く必要はないし」



残念がる事もない。



声の中に、微かに潜む憂いの感情。

それに気づいて、望美はヒノエの胸に頬を埋めた。


……そっか、そうだよね。必要ないよね。
ヒノエ君と一緒にいれば、あったかいし」


上目遣いに顔を見れば、ヒノエにしては珍しい、
淡い笑みが浮かんでいた。

そのまま、沈黙が落ちて、視線を庭へと移し、
雪色に染まっていく大地を見ていると、
「でも――」という声が耳に届いた。


「二人一緒にいる時は良いけど、離れると寒い。
……
このまま、姫君と一緒に冬籠りでもしようかな」

「冬籠りって、何だかクマみたい」

「そうだね、穴の中で眠る熊のように、
二人で、同じ褥で、ずっと抱き合って籠る。悪くないな」


いつものヒノエに戻ったのか、
艶やかな瞳で見つめられ、望美は口元を引きつらせた。


「ヒノエ君がいうと、本当にそうなりそうで怖い。
春まで離してくれなかったらどうしよう」


情けなく言った途端、ヒノエは声に出して笑った。

肩を震わせ笑う姿をぽかんと眺めていると、
突然、視界がぶれて、頭と背中に床の感触が伝わった。

押し倒されている状態だと気づいて、
望美はジタバタと暴れた。


「こんな場所で何す――!」


全てを言い終わる前に、手首を掴まれ、動きを止められ、
ヒノエに口づけられる。

じっくり味わって、最後にちゅっと可愛い音を立てて離れる唇を、
目で追いかけ、望美は全身を朱に染めた。


「だ、誰かに見られたらどうするの!」

「非難されても、止める気はないよ。
春までなんて、短い期間を心配してる可愛い姫君に、
教えなきゃいけないだろ?」

「お、教えるって何を?」


太い梁が組まれている天井を背景に、
ヒノエがうっとりとした眼差しを向ける。


「今は冬籠りで、姫君を抱きしめて」


春は霞、だから。姫君が消えないように抱きしめて。

夏は神鳴(雷)に姫君が攫われないように抱きしめて。

秋は霧に姫君が惑わされないように抱きしめて。


つまり――


「後は言わなくても、姫君なら分かってくれるね?」

……十分、分かりました」


呆れ顔の望美の唇を、再びヒノエが奪った。

そのまま、触れては離れるの動作を繰り返していくうちに、
二人の吐息がしっとりと絡んでいく。

頭の片隅には、誰かに見つかったら恥ずかしい。という焦りがあるのに、
誘惑の口づけは、蕩けるほど美味しい菓子で、抵抗する気力を奪った。


「ねぇ、姫君。本当に、今から冬籠り……しようか。
朝も昼も晩も、一日中離さない。春になっても離さない」

「ほんき、なの?」

「本気。姫君を寂しくさせた責任はとるよ。
だから、そうしよう……


ぼんやりする思考、遠くなる聴覚。

の中、囁かれた誘いに頷きかけて、望美は慌てて首を振る。


「だ、駄目だよ!一日中だなんて!ちゃんとお仕事しないと。
確かに、ヒノエ君がいないと寂しいけど、
本当にそんな事しちゃったら、沢山の人が困るでしょ?」


子供を叱るように言えば、ヒノエは苦い笑みを見せた。


「ふぅ……相変わらず、真面目だね」

「だ、だって、大事な役目があるんだし。
その役目を、ヒノエ君がとっても大切にしてるのも知ってるし」

「まぁ、それは事実だけど。それでも、姫君を選びたいって思う程。」



――
溺れてるんだけどね。



心拍数と体温が急上昇するような告白をされて、
望美は息を詰まらせる。


今日は、何だか色々なヒノエ君を見られる。

寒さが二人の距離を近づけているせいかもしれない。


思って、高鳴る胸を掌で押さえると、ヒノエが言葉を続けた。


……って、オレが想いを伝えても、
姫君は考えを変えそうにないし、でも、一緒にいたい。
この二つを満たす為にはどうしたら良いか、知っているかい?」

「え、と……どうするの?」


間抜けな声で問い返すと、
ヒノエは長い睫で縁取られた紅玉の瞳に、甘さを滲ませた。

そして、たっぷりの間を置いて、望美の耳をやんわり噛みながら、
蜜の声で言葉を紡ぐ。


「体に温もりが残れば、常に離れないのと同じ事だろ?
だから――



朝まで、熱を伝え合おうか。


外からも内からも。




意味を理解すると同時に、胸を押さえていた掌に、
じわりと汗が滲む。



「寂しさも、寒さも吹き飛ぶ名案……だろ?」



ヒノエの言う通り、帯を解かれ、衣も開かれていくのに、
凍てつく空気は、どこにも無かった。




あるのは、心に染みていくヒノエの想いと、




体の芯を疼かせる、炎のような恋情と欲情。





end

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遙時・戴き小説「水が流るるごとく」(泰vあ)

【水晶の華】の桂華さんのHPよりまたまた戴きましたフリー小説で“遙かなる時空の中で”泰明&あかねです。ホワイトデーのお話しで「水があふるるように」(バレンタイン)のお話しの続きに当たります。ヨロシケレバそちらからお読み下さい♪

(注意)お話しの権利は管理人さまにありますので二次配布や無断お持ち帰り・ご迷惑になる様な行為は絶対に御止め下さい。
また二次創作にご理解のない方はご遠慮下さい。お好きな方・興味のある方はゼヒどうぞ~*

~水が流るるごとく~ 



「あ・・・・今日ってホワイトデーだ」
「あかね様、それはなんですか?」



ふとしたことで日にちに気が付いたあかねが漏らしたこの言葉を、たまたま『彼女』が耳にしたことは、果たして幸だったのか、不幸だったのか・・・・・それは誰にもわからない。 





冬の日は短い。
朝が遅くて夜が早いのだ。
だから冬の出仕は暗いうちから出ることになるのだが、この『安倍家』に限っては今朝の出仕は見られなかった。
というのも昨夜から出ているからだ。
2,3日かかるかもしれないとは、名残惜しそうにあかねの手を握りながらの出かける前の泰明の言葉だった。
聞いたそのときは寂しげな不安げな顔をしたあかねだったが、泰明が申し訳なさそうな顔をしていたので、すぐに笑顔を見せた。

『お仕事ですもの・・・・・気をつけてくださいね』

柔らかな少女の気遣いを背に、泰明は仕事に出て行ったのだった。



屋敷には身の回りの世話や話し相手となる式神もいるし、あかねが来てからは泰明は常にあかねのそばに眷属である狭霧を置いてくれていた。
だから、一人きりということはない。
ないのだが、それでも寂しいという想いがふとした拍子に出るのは、やはり一番そばにいて欲しいのが泰明だからだろう。

泰明が出かけて一夜がすぎて、今日が二夜目。
2,3日かかるということは、本日泰明が帰ってくることが考えがたい。
あかねは溜息をつくと空を見上げた。
夕日と替わる用に昇ってきた月を見ていたのだ。

(早く寝てしまおうかな・・・・)

そんなことをあかねが考えた時、にわかに騒がしくなった。
珍しく足音が響きそれがあかねの方に向かってきている。

「あかねっ」

姿を現したのは泰明だった。

「泰明さん?2,3日はかかるって・・・」
「どうして言ってくれなかったのだ?」

きょんと眼を見開いたあかねの言葉をかき消す勢いで泰明が声をあげ、あかねのそばに滑り込んだ。
驚いたことと、何を言われているのかがわからずに、あかねは言葉が出ない。

「以前お前が蘇を作ってくれた。お前の世界の習慣だといって。今日はそのお返しをする日なのだと」
「ど・・して、知って」
「狭霧が言ってきた、イヤ、そんなことはどうでもいい。どうして言ってくれなかったのだ。何も・・・何もない」

支離滅裂・・とまでは行かないが、それでもいいたいことがうまくまとまっていないというか、矢継ぎ早に出される言葉は泰明の心情を表している。
そして最後には落ち込んだように俯いてしまった泰明に、あかねの方が慌ててしまう。

「あの・・だって、私の世界の習慣だから・・・こっちでは関係ないし」
「だが、お前は先月私にしてくれた、それがお前の世界の習慣だというのなら、それを受けたのだから私もその習慣に従うべきだ」

泰明はあかねの手を強く握った。

「私はお前に何もかえせない・・・こうしてそばにいてくれるのに・・・・」

泰明の手がかすかに震えていた。
あかねは言う言葉が見つからずにうつむいている泰明を見つめることしか出来なかった。
つらそうに見える泰明の姿にあかねの顔も歪む。


こんな思い、して欲しくなんか無いのに。


そのあかねの眼がふと泰明の懐から除く懐紙を捉えた。

「それ・・なんですか?」

あかねの声に顔をあげた泰明はその視線を追って、自身の懐からのぞく懐紙を取り出した。
開いたそこには小さな花が押し花のように綺麗に挟み込まれていた。

「昨夜、行く道すがら見つけたのだ。お前は花を好んでいたから、見せたいと思って・・・」

あかねは小さなそれを手に取ると満面の笑みを浮かべた。

「有難う泰明さん、素敵な贈り物です」
「ただの花だ。お前が自ら作ったもの比べようもない」

あかねは首を振った。

「行く途中でっていいましたよね。それっていつも私のことを気にしてくれているってことでしょう?とても嬉しいです」
「だが、そんなもので」
「贈り物って、物だけじゃない、そこにある心が大事なんです。泰明さんが気にかけてとっておいてくれたことが私は嬉しいの」

傷つけないように花を置き、あかねは泰明の手に自分の手を置いて彼の顔を覗き込んだ。
その眼にまごうこと無き喜色を見つけてようやく泰明も息をつき少女を腕の中に包み込んだ。

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遙時・戴き小説「水があふるるように」(泰vあ)

【水晶の華】の桂華さんのHPよりまたまた戴きましたフリー小説で“遙かなる時空の中で”泰明&あかねです。バレンタインのお話しです(*^◇^*)

(オリキャラ?説明:狭霧=泰明の眷属)

(注意)お話しの権利は管理人さまにありますので二次配布や無断お持ち帰り・ご迷惑になる様な行為は絶対に御止め下さい。
また二次創作にご理解のない方はご遠慮下さい。お好きな方・興味のある方はゼヒどうぞです^^

~水があふるるように~

「・・・・ねぇ、狭霧」
「はい?」

衣をかさね、戸を開けて庭を見ていたあかねの不意の呼びかけに、そばに控えていた彼女は穏やかに返事をした。
しかし、当の呼びかけた少女からはなかなか次の言葉が出てこなかった。
あかねは相変わらず庭を眺めている。
泰明が見たら良い顔はしないかもしれない。
数日前に降った雪が庭を白く染めていた。

もちろん寒い。

こんなふうに外の冷気に触れるなどそばにいれば許さないだろう。
身体を冷やして少女が体調を崩してはしまわないかと心配するのだ。
もちろん少女の体調については彼の眷属たちも気をつけている。
だが、気をつけた上でなら、少女の希望を易く叶えようとするところが泰明とは違うところである。

『お気持ちはわかりますが、心配が過ぎます』

とは、そんな眷属の言葉で、泰明はこれに対して苦い顔をするのだった。



それはさておき、狭霧はあかねからの言葉を待っていた。

「あの・・ね、なんていうのかな?・・・牛の乳から作る食べ物ってあるんでしょ?」

狭霧は思案げに口元に手を当てて、あかねの行ったものに思い当たると、顔をあげた。

「蘇でございますね、牛の乳を煮詰めたものでございます」
「それ!」

くるっとあかねが振り返って大きく頷いた。
それからあかねは膝で狭霧の元に寄った。

「それって私にもつくれるかなぁ」
「もちろん出来ますわ」

笑みと共に狭霧はさらりと言った。

「ほんと?!どうやって作るの?」
「乳を釜でゆるりと煮詰めるのです。焦がさぬように火と釜の中に気をつけながらはじめの量の10分の1くらいまで」
「10分の1?!それってかなり時間かかるよね・・・・」
「1日までは届かずといったところでしょうか」
「じゃぁ、朝からはじめれば夜には出来る?」

狭霧が頷くとあかねはほうっと息を吐いた。

「そっか・・・あ、でも牛乳ってすぐに用意できるのかな?」

少し思案して、それから狭霧はにっこりと笑った。

「お任せください、今日にもご入用ですか?」
「えっ・・・と・・・・・・明日作りたい・・・かな」
「では、朝には用意しておきましょう」
「・・・・・・・できれば泰明さんには内緒で」

ちょっと声を落としてあかねが言えば、あっさりと狭霧は頷いた。

「承知いたしました」





冬の日の出は遅く、暗い中で泰明が出仕すると、あかねの姿は賄いどころにあった。

「あかね様、こちらでございます、どうぞ」

差し出された壺を受け取って中身を鍋に移す。
火をおこすことは出来ないので、そこは狭霧にやってもらう。
そして火の扱い方を教えてもらい、鍋を火にかけた。
焦げ付くことが無いようにゆっくりとかき混ぜる。

「大変ですから、交代いたしますわ。お疲れになりましたらおっしゃってくださいまし」

狭霧が言うとあかねは首を振った。

「私が全部やりたいの・・・・・だめ?」

掬いあげるような眼で訴えるあかねに狭霧は小さく息を漏らす。

「・・・・・ご無理はなさらないでください、泰明様が心配なされます」

一番効果のある名前を出して狭霧が言えばあかねは神妙に頷いた。

「火のそばだから寒いことはないし、大丈夫。あ、でもそばで見ててね、失敗しちゃったら大変だから」
「はい、ここに控えております」

狭霧の声を受けて、あかねは目の前の釜に向かう。
ゆっくりとゆっくりと祈るように匙を動かし、温める。
少し休んではまた動かし、それでもけして誰かに任せようとはしないあかねとそれを見守る狭霧の姿がその日は一日中賄どころで見られた。

「・・・・・だいぶ煮詰まったけれど・・・・」
「はい、もうよろしゅうございます。では、こちらの型にお入れください」

差し出された入れ物にあかねは鍋の中身を入れて平らにならした。

「これで、良いのかな」
「はい、これで少しお待ちください。あかね様の真心が入っていますから、泰明様もお喜びになりますわ」

狭霧の言葉にあかねはパッと紅くなった。

「えっ・・・あ・・・ぁの・・狭霧?」

あかねはわたわたと意味も無く手を振った。
何で作りたいか、とか、誰に作りたいか、などあかねは一言も言っていないのだ。
最も、少女が『誰』のために動くのかということは皆知っている。

「あら?違いましたか?」
「ぅ・・・・違わない」

意地悪く問うて来る狭霧に、あかねは首肯した。

「・・・・・・泰明さん、食べてくれるかなぁ・・・・」
「もちろんですわ」

小さなあかねの声に、狭霧が力強く肯定すれば、あかねは小さな笑みを作った。






泰明が戻ってくると、いつものように一緒に食事をする。
だが、この日はどこと無くあかねがそわそわしていることに泰明は内心首をかしげていた。
食事が終わり、膳を片付けると、そのまま狭霧は姿を消した。

実はこれも珍しいことであった。
『下がれ』といわれるまで、そばに控えていることが常である。
そばに座りながらもどこか落ちつかなげなあかねの手を泰明はそっと握った。

「・・ぁ・・・」
「どうしたのだ?何かあるのか?」

覗き込んでくる泰明にあかねは顔を紅くする。
小さく首を振って立ち上がると、あかねはあらかじめ部屋に用意していた盆を手にしてまた泰明のそばに座った。

「あのね、これ、作ったの」

勧めるように泰明のそばに押し、あかねが口を開く。
泰明は盆の上にあるそれを見て、そしてあかねを見た。

「お前が?」

こっくりとあかねが頷くと泰明はまたそれに目を移した。

「食べてもよいか?」
「うん・・・どうぞ」

小さいけれどしっかりとした肯定に、泰明は手を伸ばす。
口に含んでゆっくりと味わう。
あかねはじっと泰明を見ていた。

「美味しい」
「・・・・・・よかったぁ」

泰明の言葉にあかねはほっとして身体の力が抜けた。
そうしている間に泰明は二つ目をつまんでいた。

「美味しい、それに暖かい・・・・・力が満ちてくる気がする」

泰明があかねを見て笑った。

「お前が作ってくれたからだろうな」

思いもかけない言葉にあかねは眼を大きく開き、やがて紅くなるとうつむいた。

「だが、どうして急に蘇を作ったりしたのだ?」

ふと泰明が不思議そうな顔をした。
あかねは泰明を見上げて軽く首をかしげた。

「私は、ここの常識がよくわからないし・・・歌も詠めないし・・・・こちらのしきたりとか知らない」
「そんなこと」
「うん、知らなければこれから知っていけば良いし教えてもらえば良いと思います。ただ、今はこちらのことを知らない。だから、私の世界の・・・・・慣習っていうのかな、それをやってみたの」
「お前の世界のこと?」
214日・・・この日はね、甘いお菓子を女の人から男の人にあげるの。いつもお世話になっている人なんかに、感謝の気持ちを込めたり・・・・・あと、特別なものもあるの」

あかねの話の邪魔はしないように、無言でだが問うように泰明は首を傾けた。
少しいいよどんで、あかねはふわりと笑った。

「女の子がね、好きな人にそれを伝える日」

あかねはきゅっと泰明に抱きついた。

「泰明さん、大好き」

一瞬驚いた泰明が、すぐにあかねを包み込んだ。

「あかね」

色々な想いが渦まいて、泰明は言葉が続かなかった。
放したくないと望んでいたことも気が付かずに見送ったこと。
いなくなっても、まだ気が付かずに心を凍りつかせていったこと。
再び出会えて、ようやく気が付いたこと。
共にありそれでも残っていた不安。
そしていま、与えら得た喜び。


二度と離さない、離せない。


言葉にならない想いをこめて泰明はそっとあかねに口付けた。

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遙時・戴き小説「暖響」(泰vあ)

【水晶の華】の桂華さんのサイトの方より戴きました“遙かなる時空の中で”フリー小説(お正月)泰明×あかねです。静かな中さり気なく?甘い泰明さんが良いのです(幸)

(注意)お話しの権利は管理人様にありますので二次配布や無断お持ち帰り・ご迷惑になる様な行為は絶対におやめ下さい。
二次創作にご理解があり一緒に楽しんで下さる方はゼヒどうぞ~*


 


















その表情は、心の映















~暖響~












た・・たた・・・・たん・たん・・・・・











覚醒した意識の中に時に規則的でありそして不規則でもある音が響いていた。
泰明は身体をずらして褥から半身を起こした。
戸から漏れいる光はあるか無しかの儚いもので、まだ夜が明けてはいないことを物語っていた。
泰明は外へと意識を向けた。その耳元に姿をなさぬ式神が言の葉を告げる。
その言葉に得心がいったと言うように彼が頷いた時、いまだ眠りの中にいる少女がわずかに身震いしたのを感じ、泰明は再び褥にもぐりこむと両腕で少女を包み込んだ。








・・・たん・・・・とん・・・・ととと・・・・たん・・・・














うるさくはない、むしろ心地よいと感じる音に泰明は目を閉じたが、常からの習慣のためか眠りに落ちることはできず目を開けると腕の中に視線を移した。
外の音にかき消されそうな小さな寝息を立てている顔を見つめて泰明は知らず笑みをこぼすとわずかに腕に力を込めた。








眠りに入れないのなら、愛しい少女を感じていればいいだけのこと







・・・とん・・とん・・・・とと・・・・・た・・・・










「ん・・・・あめ・・?」

音に誘われたのだろう、小さな呟きが聞こえたかと思うと少女が気だるげに瞬きをした。
幼くも見えるしぐさに泰明は口元に笑みをはき、そっと少女の顔を撫でた。

「いや、雪だ」
「・・・ぇ・・・・?」

眠たそうに瞬きを繰り返しながら、返さされた言葉にあかねは疑問の声をあげていた。
ようやく目が覚めたあかねは自分を見つめている泰明に紅くなった。
ともに暮らすようになってからもう何度と無くこんなふうな朝を迎えているのだが、それでも見つめられるこの顔になれることなんてないのではないかとあかねは思う。
ただ、優しいその顔が向けられているのは自分ひとりであるということをあかねは知らなかった。
恥ずかしさからわずかに身を引いたあかねだったがすぐに泰明に擦り寄った。
身を包む空気は冷たかった。

「ねぇ・・・・雪って?」
「夜のうちに積もったようだ」
「じゃぁ、この音は雪の雫?」
「だろう」

朝の静けさのためか、二人の声も小さく、外の音を妨げることがない。
その音を聞くとも無しに聞き入る。








・・・・・たん・・・・・・たたん・・・・・・とん・・・・・た・・・・・











「不思議だ・・・・今までにも聞いていた音なのに、今は心地よく感じる」
「うん・・・・・なんだか暖かな音・・・・」
「事実暖かいのだ。だから雪が解けて雫が落ちる」
「そうじゃなくて・・・・」

らしいと言えば彼らしい物言いにあかねは小さく笑った。

「二人で聞くから暖かな優しい音なんだよ。一人だったらきっと泣いちゃう・・・・寂しくて」

顔を上げてにっこりと笑ったあかねを抱く腕に泰明はわずかに力を込めた。

「お前が泣くのは困る・・・・・今日はずっとともにいよう」



外では優しく響く音が二人を包んでいた。

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遙時・戴き小説「花散らし」(泰vあ)

【水晶の華】の桂華<けいか>さんのHPの方より10000hit記念のフリー小説との事で“遙かなる時空の中で”泰明&あかね小説を戴きました。他にも数点フリーのお話しを頂いてきてしまいました。そちらも近々UP予定です (*^^*)

泰明&あかね中心のサイトさまです。他の八様も良いけれど1では特に大スキキャラの一人はやっぱり泰明さんなので色々な形(オリキャラらしき方々も)で小説を拝読させて頂け幸せです。1万hitおめでとう御座いました。またコッソリと遊びに行かせて頂きますのでサイト運営頑張って下さい(*^-^*)

今回UPは少し前の季節…「春」。桜と雨のお話しです。何だかんだとラブ2な二人の気持ちがステキだなと思いましたv

(注意)お話しの権利は管理人様にありますので二次配布や無断お持ち帰り・ご迷惑になる様な行為は絶対に御止め下さい。
二次創作にご理解がありお好きな方に一緒に楽しんで頂けましたら嬉しいです(o^_^o)


~花散らし~














耳を打つ雨は優しい音をしていた。

巡る季節もともにいよう

あかねはそう想い絡められた指をゆっくりと握り返す。確かめるように。





うん・・・私も、桜よりも何よりもこの人が笑ってくれることが一番なんだ

耳を打つ音はささやくようで心地よく、だが空気はひんやりとしている。
春の雨。
暖かかった昨日まではうそのように肌寒かった。


「神子、どうした?」

声のしたほうをあかねが驚いて見上げるとそこには泰明がいた。
外はまだ明るい。

「今日はこちらに用事があったのだ」

こんな早い時間に現れたことに驚いているとわかったのか泰明が口を開いた。語る口元にはわずかに笑みが浮かんでいる。
だが、泰明の顔からすぐに笑みが消えた。心配そうにあかねを覗きこんでくる。

「・・・ど、どうしたんですかっ?」
「先ほど、悲しそうな顔をしていた」

目の前にアップになった大好きな人の顔にどぎまぎしていたあかねだったが泰明の言葉にキョトンとした。あかねから目を離し泰明は先ほどあかねが見ていたように外に眼を移した。

「外を見ていたお前の顔は寂しそうだった」

ポツリとつぶやいた泰明に倣うようにあかねも再び庭に目を移し、あぁ、と納得したようにうなずいた。

「雨がふってるなぁって・・・・・」
「雨が嫌いなのか?」

こんどは泰明が不思議そうにあかねを見た。確かに雨だと外に出ることは出来ないが別に今まで雨だからと悲しそうな顔をしたことはなかった・・・・・・・思う。もしかしたら気が付いていなかっただけなのかもしれないが・・・・・・。

考え込むようになった泰明にあかねはそうじゃないと頭を振った。

「雨で桜が散っちゃうなって思ったの」
「桜が散ることが悲しいのか?」

いまだわからないといったような泰明の言葉にうなずきあかねは再び外を・・・・・雨を見た。

決してきつい雨ではなかったが花散らしの雨となることはうかがえる。開いた後の雨は桜を散らす。花びらか散る姿は美しいのだがそれが儚く見えることもまた事実。
泰明が忙しいため二人でゆっくりと桜を見に行くことをまだ出来ていない。そこにこの雨だ。

だから余計に寂しくなったのかもしれない。


「そういうものなのか?『人』は皆、そうなのか?」

ふとあかねは泰明を見上げた。『人』という言葉に含みがあったように思ったのは、おそらくあかねの気のせいではないだろう。いまだ彼は気にしているらしい。いや、本当にわからないのかもしれない。泰明はあまりにも『思い』を知らない。

あかねはクスリと笑った。

「ううん、人それぞれじゃないかな。私は散っちゃうのがもったいないって思うの。でもなんとも思わない人もいるよ」

泰明は考えるように黙ったまま外を見た。あかねの言葉を繰り返しているようだった。
やがて・・・・・

「桜が散ることは別に何も思わない。だがお前が悲しそうな顔をするのは、望まない・・・・・お前には笑っていてほしい」

最後の言葉はあかねの目を見て噛み締めるように口にされたものだった。
ドキンとあかねの胸がなる。

いったい彼はどれだけその言葉の意味を判って言っているのだろう・・・と思う。
と・・・泰明があかねを包むようにそばに座った。あかねの手をとるとそっと指を絡める。たったそれだけのしぐさだけれど、柔らかく握られたそれに、想いが伝わってくるようでそれだけでどきどきして鼓動が休む暇がない。
盗み見るようにあかねが泰明を見上げると彼は真剣な目であかねを見ていた。その目元があかねの目を捉え柔らかくなる。

「桜はまた咲く。そのときに見ればよい」
「・・・うん、そのときは一緒に見ましょうね」

あかねの言葉に軽く目を見開いたかと思うと泰明はすぐに嬉しそうに笑った。




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恋華・夢『不器用な甘え方』戴きましたw

-夢喰いムシ-の鵺原ユエさまから戴きました(ありがとうございますw)♪♪♪此方ではヒロインの名前はゲームのままにしました。久しぶりに大石vヒロイン作品を拝めて嬉しいです(゜◇゜人゜◇゜)サイト運営頑張って下さいね。 >>>幕末恋華・BASARA等の夢小説を扱ってらっしゃるお気に入りのサイトさまです。勝手にお世話になっています(^^*)今回戴いた作品はカゼ引き大石さんとの甘さ漂うお話で読む度怪しい笑みがこぼれています(ぐはぐはです)

<<注意>>お話の権利は当方ではなく管理人様にありますので無断お持ち帰りや二次配布他ご迷惑になる様な行為は絶対に御止め下さい。ご協力お願いします。

素敵なお話なので二次創作にご理解があり気持ちよくご観覧下さる方のみゼヒどうぞです↓

「なぁ」
「ダメです」
「まだ何も云ってないじゃないか」
「今日は一切隊務に出たらいけません」
「大袈裟だね。単なる微熱じゃないか」

鈴花が一向に譲る気がないことに溜息を付き、大石は渋々口を閉じる。
ことの始まりは床を一緒にした朝、大石の紅潮に 鈴花が違和を感じたことからである。

「大石さんは普段の体温が極端に冷たすぎるんです!」
「それが心地良いって云ったのはお前じゃないか」

情事中での会話を持ち出され、 鈴花は思わず彼に負けないほど赤面してしまう。
“違う違う、今はそんな場合じゃないッ///”
ブンブンと顔を横に振って平静を保とうとする。
自分は平気だが、滅多に風邪を召さない大石が熱を出したのは
出会ってから初めてのことで 鈴花としては極端なほどに心配なのだ。

「ほら、よく云うじゃないか。手が冷たい人間は心が・・・」
「やっぱり大石さん熱で頭が参ってますね。普段そんなこと云いませんし」

心配している割にはサクッと大石の発言を切り捨てる彼女の 鈴花もまた凄い。
ほんの少しくらい同意してくれたって良いじゃないか、というような目で
彼女を見つめるが当の本人は関係なくバタバタ動いている。
なんて報われない大石。

「近藤さんたちには私から伝えといたので完治するまで安静にですからね!」
「あー、もう。判ったよ」

「仕方ないねぇ」とボヤく声が 鈴花の耳に聞こえるが、その発言に安堵する。
だが次の言葉に思わず固まってしまう。

「勿論お前もだよ」
「え---はぃいい?!!」
「どうせ近藤さんのことだからお前の分も休みになってるだろう」
「嫌ですよ!私は仕事に出ます・・・!!」
「じゃあお前がいない間に俺がいなくなっても知らないよ」
「あ・・・ぅうう゛」
「別に行っても構わないよ。俺が居なくなって咎められるのは俺じゃないし」

額に乗せられた濡れ手拭いが心地良い。
その冷たさを感じながら大石は 鈴花に意地悪を云う。
視線を彼女に向けると、思ったとおり苦悩な表情を浮かべていた。
“いじめ甲斐のある女だ”、と毎度のことながら思う。

「と、取り敢えずそれは保留です!///」

そう云って 鈴花は大石の寝汗を拭おうと水桶から浸した手拭いを絞る。
絞ろうと背を向けた時に垣間見れた表情は自分よりも赤かったと思う。
そんな初々しい恋人に大石は声を洩らさず薄く笑ってしまう。
“素直じゃないな”、と思うがそれは自分にも云えること。
考えれば思わず自分の思考に苦笑を洩らしたくなった。

「普段汗をあまり掻かないから珍しい光景ですね」
「それはお前が見てないだけだろ?お前と寝る時掻いているじゃないか」
「っ///」

自分で墓穴を掘る 鈴花にくつくつ笑ってしまう。
“全く飽きない女だな”と感慨深く感じる。
大石に触れる 鈴花は丁寧に満遍なく汗を拭っていく。
ベタついた汗を綺麗に拭って、さっぱりとした水の心地。
何気ない気遣いがまた嬉しいのか、それとも熱が上がったのか---
不意に 鈴花の顔が上がった拍子に顔を近づける。

「傍にお前がいないと詰まらないじゃないか」

大石はそのまま顎を持ち上げ口を吸う。
まんまるとした瞳が驚きを隠せず更に大きく見開かれた。
だがその接吻に応じるように、ゆっくりと腕を大石の背に這わす。
そう、これが彼なりの---------
















不器用なえ方


















これが彼なりの表現の仕方なのだろう。
そう思うと今は静かに寝息を立てる大石に小さく笑みを零す。

「大丈夫ですよ。本当は元からお休みを頂いています」

握り締められた手に添えるように、 鈴花は空いた片手をも置いて呟いた。












<了>

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戴きBASARA夢『麗かな昼下がり』

瞬華萩灯の檜山威月さまのHPにてX'mas+お年玉『BASARA』フリー夢小説(当方では名前変更していません)がありましたのでこそっと戴いてきました♪

こちらは長曾我部元親ver.になります。奥さんとのラブ話ですv 彼は1ではPlay対象キャラではなかったのが残念でしたーー(>_<)

エロが大丈夫な方(笑)・彼がおスキな方は覗いてみて下さい*

+++ 諸注意 +++

小説の権利は当方ではなく管理人様にありますので無断お持ち帰りやご迷惑になる様な行為はおやめ下さい。二次創作等に理解のない方もお引き返えし下さい。

+++

乱世の時勢に珍しい平穏。
瀬戸内海の四国では穏やかな昼下がりがあった。

「~♪」

パタパタと軽い足取りで廊下を小走りする音がある。
一方、一室では国主である元親は難しい面持ちで先程送られてきた書状を睨んでいた。

「チッカちゃーん!!」
「うわっ……!」
「見ーつけたv」

外交関係を悩んでいる元親を他所に、突如明るい声が部屋を満たす。
背に思い切り抱きつかれ、こんなことをするのは
自分の妻しかいないと思い、“やれやれ”と元親は人知れず溜息を洩らす。
ギュッと自分を抱き締め、摺り寄せて来るのは尾張から嫁いできた正妻。
旧姓を 鵺原という。
織田傘下であるが、有能な武将の血を引く娘である。
まぁ、四国に嫁いで来る辺りで肝っ玉も相当据わっている。

ユエ」
「ん、ナーニ??」
「俺は未だ執務中だ」
「あのね、チカちゃん。私ね、遊んで欲しいのv」
「…………」

この妻、 ユエは肝っ玉もさることながら性格は物凄く変わっている。
いや、肝心な時は一般的なのだが---平時がおかしい。
愛らしい妻には変わりないが、
いつもこの様に暇さえあれば元親の執務の邪魔をしにやってくるのである。
もとより堅苦しい口調などを余り好まない彼にとって、
ユエの口調、人懐こさなどは問題視していない。
だが、こうも夫の執務の邪魔をしに来る妻など聞いた例がない。

ユエ、俺が何て云ったか覚えてっか?」
「え、お仕事中なんでしょ」
「判ってンじゃねーか!」
「やん、怒っちゃイヤー」

元親が少し窘めたところで、 ユエは笑って聞くわけもない。
それどころか胸をグイグイ彼の背に押し付けて、耳元で妖しく

(

いざな

)

う。
小さいわけでもなく、寧ろ豊かだといえる胸が存在を主張するように押し付けられれば
男である元親とて自然摂理に従ってモノが誇張し始める。
それを判ってこの妻はやっているのだろうかと、元親は疑いたくなる。

「チカちゃん、チカちゃん」
「おぅ、ンだ?」

もう此処まで来たら執務は後回しにするしかないと元親は悟る。
下手に邪険にして、書状などを破かれては堪ったモンじゃない。
苦笑いをして振り返ると、 ユエは満面の笑みで彼の胴に抱きついた。
世には愛のない政治的交わりの夫婦がいるが、
それを考えると自分は愛されていると元親は彼女の言動で常々思う。
大きな手で ユエの頭を撫でてやると、至極倖せそうに笑った。
そして少し照れくさそうに彼女は口を開く。

「口、吸って?///」
「お、如何したんだ。珍しいじゃねぇか」
「 ダ、メ…??」

顔を赤らめて、しかも目尻に涙を溜めるのは反則だと元親は思う。
こんな可愛らしい表情をされては、どんな男も拒めまい。
自分を見上げてくる視線は何処までも

(

つぶ

)

らで、
仕事を中断させざるを得なかったにも関わらず憎めない存在。
何も云わずに腰を寄せ、 ユエの顎に手を掛けて口を吸う。
ぷっくりと程好い色合いの唇は柔らかく濡れていて、吸って感じるは彼女の

(

べに

)

の味。
始めは吸うだけだった接吻は次第に深くなっていく。

「んんっ!ぁ…」

緩んだところに舌を侵入させれば、 ユエは更に艶やかな吐息を洩らす。
歯列をなぞって、口内を蹂躙すれば、互いの唾液は口端から溢れる。
元親が舌を絡ませようと探れば、彼女も逃げず、おずおずと舌を絡ませた。
ぐぐった水音と、たまに洩れる甘い吐息---。
そして元親は ユエの着物の隙間に手を伸ばして、その豊かな胸を玩び始める。
先端に触れると、そこはもう口付けだけで感じていたのか確かな誇張を示していた。
それをわざと捏ねるように、弾くようにしてやると彼女の腰は厭らしく揺れる。
やがて呼吸が苦しくなったのか、 ユエは力ない手付きで元親の胸を数度叩く。
出来ればもう少し味わっていたいと彼は思うが、
如何にも名残惜しげとでもいうように時間を掛けて ユエから唇を離す。

「ン…
はぁはぁ


力が入らないのか、 ユエは倒れるように元親の胸に傾く。
元親は彼女を膝に乗せ、自分の胸に支えるように

(

いだ

)

く。
荒い呼吸を繰り返すが、 ユエは満足そうな顔でギュッと元親の服を掴んだ。
そんな彼女が堪らなく愛しいと思って、元親は額や頬に接吻の雨を降らす。

「チカちゃん、くすぐったいよぉ///」
「ンな、可愛い

表情

(

カオ

)

するお前ぇが悪い」
「えへへ、チカちゃん愛してるーv」

呼吸もそこそこ落ち着いた ユエがお返しとばかりに元親の頬に口付ける。
すると、一気に視界が暗転した。
元親を見上げるという形は変わらないのだが、その先には天井が映る。
そこで自分が押し倒されたのだと判る。

ユエから誘ったンだからよ、良いよな?」

先程弄った所為か、肌蹴た着物に再び元親の手が侵入する。
大事なものに触るような手付きの愛撫に、 ユエは甘い声をあげた。
いよいよ元親もその気になり、情事に突入しかけた際に彼女が待ったを掛ける。

「チカちゃん、ダぁーメ!」
「今更お預けはそりゃネェぞ、 ユエ」

不服そうに声をあげる元親に ユエはおかしそうに笑って云った。






「残念でした。私は今 赤不浄の真っ最中なのですv」
「--------っ!!!」
















らかな昼下がり
















「お前、散々俺を誘っておいてそれはネェだろ!?!?」
「や! 私が気持ちよくなれないのに、チカちゃんだけなんてズルい!!
 だから口でも手でもシてあげない!!
 かと云って、小少将さんのトコ行ったら魔羅人形作って一生五寸釘で潰してやる!」
「生殺しな上に恐ぇこと云うンじゃねぇえええええ!!!!」






そんなわけで、今日も四国は元気に平和です。
きっと近いうちに御ややを授かる日も遠くないでしょう。







<了>

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戴き夢小説『らしくない優しさ』

瞬華萩灯の檜山威月さまのホムペにてXmas+お年玉『BASARA』フリー夢小説(当方では名前変更していません)がありましたのでこっそり戴いてきました*

こちらは真田幸村ver.です。幸村の気持ちに気付いていないヒロインさんとのお話とのことです。ほのぼのぼのぼのです*

おスキな方は覗いて行って下さい♪

= 諸 注 意 =

小説の権利は当方ではなく管理人様にありますので無断お持ち帰りやご迷惑になるような行為はおやめ下さい。二次創作等に理解のない方もお引き換えし下さいませ。

===

「お腹痛い・・・」

“う゛~”と呻き声が小さな部屋に響く。
いや、小さいと云っても一介の武将の為に宛がわれた部屋にしては大きいに入るのであろう。
だが、その部屋の中心で ユエは自分のお腹を抱えて転がっていた。

「畜生ぅうう。これだから女は嫌なのよ・・・」

痛む腹を擦りながら ユエは愚痴を零す。
普段なら多少を無理して出ているところだが、以前そうした無理をして倒れたことがあった。
それ以降主君である信玄は彼女に赤不浄の際に鍛錬や任務に就くのを禁じたのである。
有り難い様な、そうでない様な配慮で正直首を傾げたが。
ユエのような戦武将にとっては、正直戦いたい時にそうなってしまうのが歯痒い。
何より武田軍幹部クラスで唯一の女武将だ。
手柄を立てること、主君の為に命を賭とすることを生き甲斐としている。

「ぁーあ。こんなことなら女に生まれたくなかったわ」
「---あらら、そんなコト云わない方が良いよ?」
「っ!気配なく現れないで頂戴---佐助」
「ありゃ、俺様の気配を読めないほど症状が重いわけ?」
「今日二日目だから一番辛いのよ・・・悪いけど、後でいつもの薬頂戴・・・・・・」
「あちゃー。よっぽど酷いのね。はいはい、後で夕餉の時にでも持ってくるさ」

億劫そうに瞳を開けると、 ユエの気色を窺うように佐助が額に手を当てる。
わざわざ手甲まで外して測ってくれているようだ。
今の自分がひどく体温が低下している所為か彼の手の温いが心地良い。
うっとりとしてまた瞼を閉じてしまう。

「相変わらずこの時の ユエは体温が低いね」
「それだけ辛いのだと悟って・・・」

目を閉じたまま答えると、佐助は苦笑を洩らした。
“イイコ、イイコ”といったように二、三度 ユエの頭を撫でると彼は少し遠慮気味に口を開く。

「体調不良で辛いけど、もうすぐ旦那来るから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「いや、だからね、旦那が「殺されたいのかアイツは?!

佐助は案の定といった感じで苦笑しかしない。
閉じていた瞳を開けて、 ユエは瞳孔を開かんとばかりにドスの利いた声を発する。

「落ち着いて聞いてよ、 ユエ。旦那は旦那なりに気を遣ってるつもりだから」
「・・・・・・・・・・・・」
「---! 旦那が来たようだから俺様は去るね。ちゃんと後で薬届けるから!」
「あ、ちくしょ!待てって、さす・・・・・・」

反論してやろうと思ったのに、 ユエが体勢を起こす前に佐助はそそくさと消えてしまう。
ッチ、と軽く舌打ちをするが、佐助が云うように廊下から足音が聞こえてくる。
平時なら問題ないが、今はただでさえ体調が優れない。
下手に自分の相手をするならとばっちりを受ける覚悟がないと相手が可哀想だ。
殺気立っている自分の性格は自分が良く判っている。

ユエ殿―!!」
(案の定コイツが来たよ・・・・・・あぁ、頭いてぇ)

佐助が出任せを云う訳ないと判っているが、
ニコニコと笑みを浮かべて部屋に入ってくる姿に ユエは頭を抱えて泣きたくなった。
腹部が痛いはずなのに、頭痛までするのは気のせいだろうか。
自分が不調な時に相手がこんなにも眩しい笑みをしているのは、無性に腹立たしい。
お門違いなのは判っている。
だけれど苛立つのだ。そっとしておいて欲しい、これが正直な本音である。

「何の用?」

我ながら素っ気ない態度だと ユエは内心苦笑しながら、つい口走ってしまう。
下手に長居させるよりもその方が相手を傷つけずに済む。
早々に事を片そうとする。

ユエ殿は、そのっ、あの・・・・・・!」
「焦れったいから早く云ってくんない?」
「だから、某は---!!」

ヤバイ、と ユエは自分の中で感じた。
こんな些細なことさえもウザいとか早く失せろとか思ってしまう。
同僚の幸村には悪いが、早々に立ち去って貰った方が賢明だ。
そんな時だ。
ピキっと額に青筋を浮かべる ユエに、幸村は言葉にならないのか そっと物を差し出してきた。

「-------? 何コレ」
「きな粉餅である!!」
「・・・・・・見りゃあ判るわよ。で、何でそれを私に持ってきたのかって聞いてんの」

差し出されたのは今まさに出来たばかりですと云わんばかりの湯気がたったきな粉餅。
侍女達に頼んで作ってもらったのかと窺えるその餅は
美味しそうな薫りを立てて ユエの鼻腔を擽った。
だが、何故それを ユエの元に届けるのかが解せないのだ。

ユエ殿は、その・・・今月のモノなのであろう・・・?///」
「--------は?!」
「あの時以来、その、月に一度休まれるようになって」
「あぁ、うん。お館様の計らいでね・・・。で、それとコレが何の関係があるの?」
「佐助に聞いたのだ。 ユエ殿は今、血が不足しているのだと。
 だから少しでも ユエ殿の体に良いものを作って参ったのだ!!」
「へ??これ、幸村が作ったの?!」

最後の言葉に驚いて、幸村と餅を何度も見つめてしまう。
すると彼は、少しはみかみながら照れくさそうに微笑んだ。

「手伝って貰いながら、某が作ったのだ。
 これなら ユエ殿の体を冷やすことはなかろうと思って」

さっきまでの腹立たしさなど何処吹く風。
驚きや嬉しさがこみ上げて、思わず此方も微笑してしまう。
ユエは幸村を見やると、そこには苦労した跡が窺えた。
火傷をしたのであろう、手には軽く包帯が巻かれていた。
誰の差し金かなんて判り易すぎて考えるのも馬鹿馬鹿しい。

「ありがと。有り難く戴くよ」

考えるのは馬鹿馬鹿しいが、同僚の思いがけない心遣いを受けるのも悪くない。
怪我までして自分を気遣ってくれたのだと思うと、自然と心が温かくなる。
ユエは手を伸ばして皿を受け取ると同時に幸村の手を掴む。

「ゆ、 ユエ殿?!///」
「折角だから一緒に食べよ?」

機嫌を直して、平時の笑顔で誘いかけると幸村は赤面しながらコクコクと頷いた。
その表情が可愛くて、ついつい からかいたくなる。





「はい、幸村。あーんv」
「ぶぅうううううう!!破廉恥で御座るぁあああああ!!!」














らしくないしさ
















「旦那もまだまだ初心だねぇえ」

と、天井裏で佐助が零していたのも幸村は知る由もない。










<了>

|

戴き夢『祈りの謳を、誓いの口付けを』

瞬華萩灯の檜山威月さまのHPよりBASARAフリー夢小説(ヒロインの名前は変えていません)を戴いてきました^^*

Xmas+お年玉フリーだそうです♪こちらは伊達政宗と町娘なヒロインさんとの夢小説です。

↓ ここで諸注意を ↓

小説の権利は当方ではなく管理人様にありますので無断お持ち帰りやご迷惑になる行為は絶対におやめ下さい。二次創作等に理解のない方はお引き返し下さい。おスキな方のみ覗いて行って下さい(v_v*)

***

「…ん……ぅ」

寝苦しさに耐え兼ね声を洩らすと、冷たい手が自分の額に置かれるのが判った。
それは自分が知っている優しい手。
夢路から現へと意識を戻そうとする。
久々なのだ、彼と会うのは---。

「ま さ…むね、様 ?」
「Yes. ユエ、俺が判るか?」

重たい瞼を開けると、そこには ユエが会いたくて会いたくて堪らなかった人物が目に入る。
政宗は虚ろげな彼女の上体をゆっくり起こす。
自分のことが判るかと彼女に問えば、こくんと頷いたのに安堵する。

「ほら、白湯を飲め」
「有り難う御座います…」

今にも消えそうな笑みを浮かべて、 ユエは政宗から湯飲みを受け取り、白湯を飲む。
その姿を見て、政宗は儚げな彼女を抱き、今の自分を歯痒く思う。
ユエは現在政宗の寵愛を受けて身籠っている。
だが、彼女は正室でもなく側室ですらない。
彼女は一介の町娘である。
城下にお忍びで出た際に、政宗が見初めたのである。

「気分はどうだ?」
「今日は随分と良いみたいです。政宗様とお会い出来て嬉しいですから」
「嬉しいことを云ってくれるじゃねぇか」
「私は嘘を申しませんよ」

自分の胸に寄り掛からせる形で ユエを抱く政宗は、笑って戯れるような接吻の雨を降らす。
ユエはクスクス笑いながら、くすぐったいような声を洩らして受ける。
それを享受しながら、彼女の手は丸みの帯びた腹部へと伸びている。

「あとどれ位なんだ?」
「そうですね…薬師様のお話ですと早くて後ひと月ほどで」
「そうか……」

そういって狭い一室に沈黙が流れる。
---後ひと月。
その言葉が政宗には如何しようもなく歯痒い。
自分が今日、 ユエの元を訪れたのは理由があった。
もちろん彼女を見舞うこともあったのが、それ以上に告げなくてはならないことがあった。
悶々としている政宗に、 ユエはゆっくりと自分を抱いてくれている手に手を重ねる。

ユエはですね、政宗様。政宗様がご活躍なさるお姿が好きですよ?」
「…………っ!!」
「ご正室様や側室様がいらしても、政宗様---私は政宗様の御ややを産みとう御座います」
ユエ……」
「ご出陣、頑張って下さいませ」

祈るように、慈しむように、手を重ねて、指を絡める。
自分にはただ祈ることしか出来ないから。
政宗の愛を受けただけでも倖せなのだ。

孤児

(

みなしご

)

であった自分を、好いてくれた、それだけで充分なのだから。
彼が今日訪れた意味は実は知っていた。
町中で伊達軍が出陣すると騒いでいるから、自然と耳に入る。
だから、そろそろ来るのではないかと予期していたのである。

ユエ……俺は、俺は…っ!」
「政宗様、 ユエはお願いが一つだけ御座います」

必死な政宗を ユエは穏やかな顔を制して、云った。
この時、 ユエは彼の方を向いて伸びやかな口調で言葉を紡ぐ。

「生まれいづる御ややにお名前を下さいませね?」
「!!」

政宗の正室や側室、周囲の罵声などあろうが関係ない。
ユエは自分がどうなろうと、この身に身籠った我が子だけは守ろうと思った。
今この腹に宿りし子だけが唯一の肉親なのだから。
愛する政宗との血を引く、たった一人の血の繋がりを持った我が子。

「約束する、 ユエ……必ず戦勝し、俺とお前との子に-------」

続きの言葉は淡い口付けとともに空気に溶けた。
全ての不安を拭うかのような啄ばむ接吻。
結局、政宗も ユエも不安なのだ。
自分では如何しようのない身分や環境が互いを歯痒くさせる。

「戦から帰ったらpartyすんぞ、 ユエ」
「祝って下さるのですか、この子の為に?」
「コイツだけじゃねぇよ。---お前を嫁に迎えんだ」
「まぁ」
「拒むなよ?だから俺が戦に行っている間、俺の家臣の屋敷に移って欲しい」

そう政宗が口に出すか否やのところで、スッと戸口に気配が出た。
政宗の重臣である、片倉小十郎である。
彼は戦でいない間の ユエに関する任を任せようと考えていた。
実を申せば ユエを自分の城に迎えるのには大分抵抗があった。
身分云々よりも奥殿で彼女が正室や他の側室に何かされないかという不安。
後ろ盾がない分、彼女は孤立してしまうのだ。
自分しか彼女を守れないのだ。
そう考えても、どうしても彼女を自分の手許に置いておきたくて漸く口に出したのである。
そんな政宗の胸中を察したのか ユエはおどけた声で口を開いた。

「例え私に何をされましても、お姫様方の悪戯は可愛いもので御座いましょう」

その言葉に、政宗は絶句し、小十郎は思わず笑ってしまう。
つまりは皮肉を云ったのである。
---育ちの良いお姫様のする嫌がらせなどタカが知れている。
孤児で此処まで培ってきた忍耐があるから、そんなもの自分には痛くも痒くもない。---
と、暗に ユエは云っているのである。
別段、彼女たちを庇っている訳ではない発言だ。
これには流石に重臣の小十郎も“なるほど”と思った程。

(儚く思わせるのに、これほどまで芯がある方ならば政宗様が惹かれるお気持ちも判る)

「Ha!云うじゃねぇか、my honey!!」
「私には私なりの積み重ねがありますから、そうでなければ政宗様のお勤めなど出来ませぬ」
「Ha-n!最高だぜ!!なぁ、小十郎?」
「はい。これから宜しくお願い致しますね、 ユエ様」
「不束者で御座いますが、宜しくお願い申し上げます」

これほどまでに政宗が思案し、恋焦がれた者なら末先の伊達家は安泰だろうと
小十郎は何の証拠もなしについ思いたくなった。
磨けば光る、そう云った故人は誰だろうか。
そんなことを脳裏に掠めながら、今は主君とその想い人の仲睦まじい光景に微笑む。













祈りのを、


いの口付けを
















「思えば、父も母の愛を知らぬ私が母になれるのでしょうか?」
「俺が普段、お前を愛しているようにしてやれば良いんだよ」
「あぁ、ややにも子の成し方を教えろと?」
「No!そんなコト云ってねぇ!!」
「ふふふ。けれど、政宗様の愛し方はそうで御座いましょう」
「~~~っ、 ユエ!!」

狭い一室に笑いが溢れる。
そう、 ユエはこんな日常だけで良いのだ。
正室や側室の座、艶やかな着物など欲しくない。
夫がいて、我が子がいて、そして自分がいる。
その中で手を取り合い、生活できれば、それ以上に何も望むことはないだろう。








今はただこの倖せを噛み締め、明日からは腹の子と共に彼の人へ祈りを捧げよう。









<了>

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頂き夢「真夏の夜の夢」

瞬華萩灯の檜山威月さまのサイトさんで残暑お見舞いフリー配信していましたのでまたまた頂いてきてしまいました。今回はBASARA佐助とのエロ夢小説です。(お相手の名前はこちらでは登録されていたもののままになっております。)

オトナ向け表現がありますので苦手な方や同人にご理解のない方はこのまま回れ右して下さい

PS2“戦国BASARAは友人のPlayを見たことは何度かありますが(2はプロモがカッコよかった♪)自分では実は未Playです(…がその内借りたいなぁと目論見中~。)コー○ーさんの“戦国無双”の方では佐助を使って任務に挑戦して敗退してみたり(ダメじゃん)したことはあります。下手だけど使うの好きなキャラではあります(^_^*)

強奪してきましたが権利等は当サイトにはありませんので無断お持ち帰りやご迷惑のかかる行為はお止め下さいね。ではでは おスキな方は是非ご覧になってみて下さいませ~。

(それにしてもホント ブログとの相性悪い...。何度UP→勝手に削除 UP→勝手に文字サイズや色変換等されたことか...。もしまたおかしくなっていたらスミマセン。いずれ直せそうならUPし直します/泣)

===

「ね、佐助。佐助は私のこと好き?」

     トロンとした瞳で自分の上に乗っかるユエに佐助は目を見開いて驚く。
     自分は忍であるのにも関わらず、彼女が寝所に侵入したことにも気付かなかった。

     だが自分の失態を責めるよりも、彼女が自分に馬乗りして
     問いかけてくることの方が何より一番の衝撃であった。

     「如何したの、ユエ?いつもは誘っても俺様の部屋には来ないのに」

     忍の習性で熟睡していなかったのが幸いか、
     ユエの突然の来訪に混乱するも頭はすぐさま働いた。
     虚ろげな瞳をする彼女の頬に手を当てると、

     彼女はそのまま自分の手を添えて、うっとりとした表情をする。

     「ねぇ、答えて。佐助は私のことが好き?」
     「いつも云ってるでしょ。俺はユエが好きだって」

     その柔らかな頬を撫でながら上目遣いに笑って云うと、ユエは至極満足そうに笑う。

     「ねぇ、今日は本当に如何したのさ。如何いう風の吹き回し?」

     優しく問いかけるが、佐助は内心今の状況が解せないでいた。
     普段の彼女は決してこんなことを訊ねたり、まして夜更けに訪れたりもしない。

     戦武将として名高い彼女に露骨に好意を寄せている佐助はいつも邪険に扱われる始末。

     こうしてユエが訪れてくれることは嬉しいが、だからこそその意図が読めない。

     「何だか佐助に会いたくなったの。----それじゃ、駄目?」

     戸惑い気に首を傾げる姿は普段の気丈さからは
 
    想像出来ないくらいに可愛くて佐助は思わず動揺する。
     コイツ、絶対忍にもなれる・・・っと内心呟くほど。
     戦武将と思えぬほど美しい容貌を持つユエに佐助は陶酔した。


     「ユエ」
     「なぁに、佐助?」

     ユエの名を呼ぶと、彼女は甘い声音で返す。
     高過ぎず低過ぎず澄んだ声音は耳触りに良く、いつでも聴いていたいと思わせる。
     薄暗い寝所でも艶のあるのが判る口唇に親指の腹を当てて撫でたら、
     彼女は佐助の手を取り口付ける。


     「もしかして誘ってる?」

     「女が寝所にやって来る理由が他にあって?」

     佐助の手を自分の胸元に寄せながら云うユエ。
     据え膳喰わぬは男の恥だよね
     折角自分の好いた女から誘われたのだから喰わずにはいられない。
     あとあと文句云われようが、誘ったのはユエだと周囲に云える。

     「ね、ユエ----俺のこと好き?」

     「好き、愛してる。だから・・・・・・」

     言葉を紡ごうとするユエの腰を掴み、佐助は自分の元に寄せて口を吸う。
     乱暴な接吻の仕方に始めは抵抗するユエだが、

     酸素を奪われ思考が回らなくなっていくに連れ抵抗もなくなる。
     佐助は僅かに開いた隙間から舌を捻じ込み、彼女の口内を蹂躙する。
     歯列をなぞり、躊躇する彼女の舌を絡ませて弄ぶ。


     「あふ・・・んん」


     その婀娜めいた声は佐助をより刺激する。
     下肢の昂ぶりは硬度を増して、今すぐにでもというくらいにユエを欲す。
     ユエの小さな口からはどちらのものか判らぬ唾液が溢れている。
     呼吸が苦しくなったのかトン、と佐助の胸を叩くユエに佐助は仕方なく唇を離す。
     余裕な佐助を他所に、ユエは肩で荒々しく息をする。
     今の行為で力が入らずぐったりとするユエを抱き締め、佐助は愛おしげに彼女を髪を梳く。


     「気持ち良かった?」
     「ん・・・」

     浅い呼吸しか出来ないでいるユエに問いかけると、
     それでも涙目になりながら笑って佐助を見つめる。
     平時の気丈な彼女とは思えない悩めしい姿は非常にそそられた。
     普段の彼女に対しては無茶苦茶にしてやりたい衝動に駆られるが、

     目の前の彼女は逆に大事に労わってやりたいと思わせる雰囲気がある。


     「ユエは俺のものだよ」


     そう云ってユエの首筋に噛み付いてやると、「痛っ」と小さな悲鳴が鼓膜に届く。
     それでも佐助は止めずに、自分の所有印を残してやる。
     大きな噛み跡の後は、残る首筋と鎖骨に真っ朱な痕を残す。
     片手で支えながら、もう一方でユエの夜着の間に手を差し込むと

     やはり予想していた通り秘所はしとどに潤っていた。

     「きゃッ!」
     「あれ、ユエってもしかして・・・・・・」

     迷い無くユエのナカに指を差し入れると、悲鳴にも似た声が部屋を木霊する。
     余りにキツく狭い膣内は佐助の二本の指を容赦なく締め付けた。
     痛みに顔を歪めるユエに恐る恐る尋ねると、
     彼女は恥ずかしげに、そして顔を真っ赤にして小さく頷く。


     「ごめんね、ユエ。ゆっくり解すから力抜いて?」

     突然、異物が体内に入ったことで躯を強張らせたユエに優しく声を落とすと
     彼女は少し脅えた瞳で佐助を見つめる。
     “大丈夫だから”、と何度も彼女の頭を撫でながら呟く。
     そうすると ゆっくり躯の力を抜いてきたのか、大分すんなりと彼女の膣内を刺激できた。

     「ゃあぁ・・・っ///


     透明な蜜液で潤うユエのナカを指で不規則に動かしてやれば彼女は引っ切り無しに喘ぐ。
     ぽろぽろと涙を流し、顔を左右に振って乱れた。
     指で充分に解したな、と思う頃には佐助の指はふやけたかと思うくらいだ。
     それくらいにユエの中は熱く蠢き、そして佐助を欲していた。

     「ね、ユエ。俺のこと好きなら証明してみせてよ」


     指だけでも啼かされていたユエは力が入らずにいた。
     だがそんな彼女の腰を持ち、ゆっくりと上体を起こさせる。
     一体何をしろというのか、と訳が判らないユエはおろおろと困惑する。
     そして佐助は妖しく笑って云った。


     「自分で挿れてみて」



     その言葉にユエは“あぅ・・・”などと微かな否定声をあげて首を振る。
     初めての性交なのに、いくらなんでも勝手が判らなすぎた。
     目尻に溜めた涙はホロリと頬を伝い、佐助の服に染みを作る。
     ユエを労わって抱こうと思うが、やはり嗜虐心が働くらしい。
     佐助は自分で己の昂ぶったモノを困惑しながら挿入するユエの痴態を見たくて堪らなかった。

     「出 来ない、佐助・・・」
     「やってみなきゃ判らないでしょ」


     “ほら”、とユエの腰を浮かして、自分の昂ぶりにユエの秘所が当たるようにしてやる。
     するユエは嬌声をあげて淫らに腰を振り出す。
     完璧にナカに挿ってないとはいえ、愛液で濡れた入り口に
     佐助の切っ先が彷徨って微妙な刺激を与えた所為である。
     だが、佐助の行動はそれだけ。
     あとはユエが動かなければ何一つ与えられないのだ。
     始めは陰核に佐助のモノが当たっただけで満足していたユエも躯が慣れるにつれ
     物足りなさを感じ、蜜壺は蜜を垂らしてヒクつくばかり。

     「ヤ・・・!佐助、早 く・・・・・・」
     「ユエ、欲しいなら自分でやって。自分から誘ったんだから---出来るよね?」

     汗か涙かも判らない。
     だけれど、下の佐助は腰を固定したまま動かないとすれば自分が動くしかない。

     そう悟ったユエは、おずおずと下に天井を仰ぐ昂ぶりに手を伸ばす。
     初めて触る男のモノは熱くてとても硬い、という印象を受けた。
     だがそんな考えも吹き飛ばして、ユエは先走りを放つ熱い逸物を支えて
     躊躇いながらゆっくりと自分の蜜を溢す秘所へと導く。

     「そう、いい感じだよ」
     「ひゃぁあ・・・ッ!!」

     破瓜の痛みが訪れたのかユエは激しく泣き叫び、そして喘ぐ。
     ギュウギュウと締め付ける彼女の膣内は流石に佐助にも堪えるほど気持ちの良い感触だった。

     「ユエ、判る?ユエは今俺とひとつになったんだよ」

     佐助に貫かれ、馬乗りの状態でいるユエに呟いた。
     下から勢いよく突いてやれば甘い嬌声が部屋を支配して、佐助の逸物は一段と硬度を増す。
     自分の上で乱れるユエは普段の何倍も扇情的であった。






     「佐助、好き。愛してる」





     喘ぐ合間に小さく云われたこの一言。
     いつも望んで止まない言葉が彼女から云われるだけで、佐助は嬉しくて堪らなかった。
     上で腰を振る彼女を無理矢理抱き寄せ、口を吸う。
     “あぁ。この倖せが何時までも続けば良いのに”、と願わずにいられなかった。
     甘い彼女の唇を丹念に味わいながら、佐助は今までの想いの丈を込めて
     思う存分自分の為に乱れてくれる彼女を抱き締めた。






     
■□■□■






     襖の隙間から差し込む日差しに照らされて佐助は寝覚める。
     少し寝惚けた思考で辺りを見渡すが、抱き締めて眠ったはずのユエがいない。
     まして隣にいた感触すら残っていないのだ。
     だが、自分の下肢に残るのはザラザラとした感触の悪いものと、朝から元気な自分の分身。




     「嘘ー。この歳で夢精とか勘弁してよ」



     “真田の旦那に破廉恥って云われる・・・”
     ガックリ頭を垂れる佐助。
     あまりの衝撃に眠気もぶっ飛ぶ。
     しかし夢か、と思うと不思議と割り切れるものがあった。

     自分の好いたユエがあんな積極的になるのもやはり解せないし、
     どちらかと云えば虐げて屈服させる方が好みだったりする。
     勿論従順なユエも可愛かったが。
     物思いに更けていると廊下から慌しい足音が聞こえ始める。

     「佐助っ!何時まで寝ているつもり!?朝議の刻限は近いのよ!」
     「あぁ、悪い。今行くよ・・・・・・・・・って!!?」


     断りも無く襖が開けられ、朝から怒声に近い声が鳴り響く。
     だが佐助は自分の耳に響く怒声よりも、己の目を疑いたくなった。








     「ねぇ、ユエ・・・その首は如何したの?」







     昨夜任務を終えて別れた時には無かった彼女の首筋には真新しい包帯が巻かれていた。












真夏のの夢
















     あーらら、夢なら覚めなきゃ良かったのに。
     まぁ、夢で堕としても仕方ないし?
     夢か 現(うつつ
)

か判らないけどさ、真っ朱な顔して包帯押さえてるってことは
     俺様、あともう一押しってところかね。











     <了>

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頂き夢小説「うたた寝禁物、獣有り。」

瞬華萩灯の檜山威月さまから残暑お見舞いフリー配信していましたので強奪してきましたwV
よくコッソリ幕末恋華の大石夢を中心に覗きに行かせて頂いているサイト様のひとつです
PS2ゲーム
“幕末恋華新撰組”大石×ヒロイン(夢小説サイト様なのですが↓ではヒロインの名前そのままの桜庭鈴花で載せています)小説/微エロです。

強奪してきましたが権利等は当サイトにはありませんので無断お持ち帰りや瞬華萩灯の檜山威月さまにご迷惑のかかる行為はお止め下さい。ではでは 苦手な方は回れ右で閉じておスキな方は是非ご覧になってみて下さい***

===

京の夏は暑い。
     盆地というのもあるが、京育ち以外の人間には少々辛い季節である。



     珍しく稽古に出、暑い中さらに汗を流してきた大石に思わぬ幸運が転がり込んで来た。
     井戸水で汗を流して、早々に部屋に戻ろうとした矢先の出来事。
     丁度夕七ツ(十六時)を回って、縁側の一部が日陰になっているところに
     大石はゴロンと丸くなっている物体を見つける。

     「ねぇ、何やってるのさ」

     濡れ布で再び流れてくる汗を拭いながら、大石は問いかける。
     だが夢の中に入り込んでいる人物は答えない。
     日陰による程よい温度に加え、微風がやわらかく頬に当たる。
     その心地良さにきっと熟睡しているのだろう。

     「ん・・・ぅ・・・・・・」

     縁側で大の字とまではいかないものの、日陰になった処を占領するかのように
     新選組女隊士の 桜庭 鈴花は眠っていた。
     大石がヤレヤレと溜息をつきながら、しゃがみ込んで頬を突付くと彼女は眉間に皺を寄せて呻く。
     だが彼女の眠りは深くて、またも夢世界に旅立ってしまった。
     大石からすれば、これは詰まらない反応だ。

     「・・・!」

     何を思いついたか、大石は 鈴花の寝顔を見て薄く笑う。
     そう、今の彼の表情を云い表すならば----“悪戯を思いついた狐”のよう。
     大石は寝転がっている 鈴花に音もなく覆い被さり、 鈴花の首筋に顔を埋める。
     寝返りを打ったのか、彼女の着物は少し肌蹴ていて、鎖骨どころか胸元も垣間見れる。

     「本当に馬鹿だねぇ、お前は」

     そう云いつつも気持ち悪い---いや、意地の悪い笑みを浮かべながら
     眠る 鈴花の躯に真っ朱な華を散らす大石。
     彼女の肌から薄く薫る香の匂いを味わうように
     ピチャピチャと音を立てて舐めてやると流石に 鈴花も身動ぎはじめる。

     「ふぁ・・・んっ」

     未だ自分が何をされているのか判っていないのであろう。
     少し艶めいた声を彼女があげると大石は途端に面白がって行動を加速させる。
      鈴花の乱れた着物の隙間から手を入れ、やわらかな胸を揉み解す。
     変わらず大石の唇は 鈴花の躯を貪り続けている。
     傍から見れば盛りに盛った獣そのもの。
     発達途上といえど性感帯の一つとも云える胸を弄られれば自然と躯は反応を示し始める。

     「ッや・・・」

     口が開いた隙を狙って大石は 鈴花の口唇を貪る。
     抵抗してこないのを良いことに彼女の舌を絡ませて、口内を蹂躙する。
      鈴花は息苦しさに耐えかねて夢路から現実へと目を覚ます。
     途切れ途切れの息継ぎしか出来ず、しかも寝起きで意識が朦朧としているが
     自分の上に誰かいるのだけは確認できた。
     大石は 鈴花が目を覚ましたのに気付き、更なる刺激を加え始めた。

     「ひゃっ///」

     流石の 鈴花も一瞬にして覚醒した。
     大石が加えた新たな刺激。
     それは---感じ始めて蜜が潤う秘所へ。
     思わず喘いで、口を閉じてしまう。
     すると、ガリッと音が 鈴花の鼓膜に響いた。

     「ったく、痛いねぇ・・・・・・」

     痛みの所為で咄嗟に唇を離す大石はペロッと舌を出す。
     その舌は見事に真新しい鮮血が流れていた。

     「お、おいし・・・さん?」

     酸欠の所為で涙目になりながら 鈴花は自分に覆い被さる相手を確認する。
     彼女は今まで自分の身に何が起こったのか理解出来ていないのだろう。
     寝起きの彼女は息を整えながら自分の上にいる人物に問うた。

     「何で、大石さんが・・・?」
     「あのねぇ、縁側の通路を占領していたのはお前だよ」

     だからといって彼女の躯を好き放題にして良いわけないのだが。
     それでも大石は肝心なことを云わずにいた。
      鈴花が起きたことにより、秘所に指を挿れたり、
     胸をまさぐるのは止めたが、彼女の頬に口付けたりする行為は続行された。
     上気した頬に口付けすると、初心な反応が返ってきて大石を魅了する。
     だが、ここまで来ると 鈴花は落ち着きを取り戻し漸く事態を把握し出す。

     「ちょ、待って下さい!何でこんな状況になってるんです!?」
     「ったく。お前は雰囲気をぶち壊すのが好きだよね」
     「そういう問題じゃありません!///」
     「人が汗水流して稽古から帰ってみれば、縁側の日陰でうたた寝こいてる馬鹿を見つけたのさ」
     「う゛・・・」

     確かに縁側を占領したのは悪いと思うが、何も襲わなくても!
     と、 鈴花は思うが見上げる視線の先の人物が恐くて云い返せない。
     「う~」と言葉を濁す 鈴花に、大石は溢れんばかりの眩しい笑顔で云った。


     「普段から俺に云ってる癖に、お前が汗を掻かないのはズルイと思うんだけど?」


     ヒィイイっと 鈴花は自分自身が凍りつくのが判った。
     嘘臭い笑顔も充分に鳥肌モンだが、この後に自分の身に降り懸かるであろう不幸に
      鈴花は身を縮こませて震え上がる。


     「お前は俺のモノだよ。だって俺の印があるんだから」


     冷や汗タラタラの 鈴花に最終宣告が投下された。
     艶めいた低い声音で 鈴花の耳元に囁かれ、 鈴花の動きはピタッと止まる。
     それをいいことに大石は石化していると云える動かない彼女を抱き起こし、
     さっさと自分の部屋に連れ運んだ。
     ドサッと布団に投げられた時に暴れようとするが、簡単に頭上に両手を絡め取られ、
     凍りつく言葉を吐かれて 鈴花はとうとう屈した。












     「今夜は寝かせないから覚悟しなよ」




うたた禁物、有り。




     翌日、 鈴花は太陽が南天に昇っている時に目覚めた。
     そして激しい情事の所為で傷む腰を労わりながら思った。
     もう縁側でうたた寝するまい、と。














     <了>

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キリ番5000記念の頂き小説v

先日お気に入りの新撰組夢小説サイト『In Little Time』の逢水高陽さまからキリ番5000を踏んだ記念に(別ネームで頂いてます)リクエストさせて戴いたお話しをご了承を得ましたのでUPしてみました

永倉×ヒロイン<二番隊女隊士/サイトさまの方では名前変換可能>小説です。背景は載せられませんでしたが(URL貼り付けてみたら良かったのか)ステキなお話しですので宜しければご覧になってみて下さいwV 

ぐふぐふニヤニヤしながら読ませて頂いているお話しです逢水様本当に有難う御座いました(ノ*^▽)ノ*** 

(無断転載・お持ち帰り他ご迷惑になる行為はご遠慮下さい)

+++

背中に温かさがある。

背中合わせ










 わからないけれど、感じないけれど。

 波立ち、確かに脈を打っている。

 座る自分の上半身を僅かに支えていた、畳につけていた手をはずす。

 自分の重さに従って、背にかかる力が大きくなる。

 すると、背の向こうから降りかかる声。



「… 葵。今、俺はなにしてる?」

「報告書書き?」

「提出相手は?」

「土方さん?」

「そこまでわかってて、こんな字をふらつかせるようなことしてるの?」

「………」



 だって、彼の背は、温かいから。

 安心、するから。

 いつもいつも触れていたいのに。

 いつもいつも、傍にいてほしいのに。

 そんな子供みたいな願いは、叶わない。



「永倉さん、どうしたの?こんな重さも耐えられない?」

「いや、そうじゃなくてね」

「なら、文句言わない」



 そして私はもっと、自分の体を彼に沈めるのだ。















「…暑い」



 夏の夜だ。

 冬には恋しい温もりも、夏にはうっとおしいことこの上ない。

 そして、嬉しくて。

 …加えて、多少心臓に悪い。

 もう完全に自分に寄りかかっている小さな背を、この状況で振り落とせる者がいたら心から褒めて差し上げたい。



「…… 葵。本当に、退いてくれない?」

「………」

「報告書、終わっちゃったんですけど」

「………」

「… 葵?」



 もしかして寝ているのかと、ゆっくりと、背中が外れないように振り返った。

  葵は、振り返らない。

 大きな瞳で、まっすぐに。

 真っ黒くなっている、壁の自分の影を見ていた。

 永倉はまた、ゆっくりと元の場所に視線を戻す。

 こちらは、明るい。

 ゆらゆら、揺れる灯。



「……たまーに、ですけど」



 しばらく、永倉の視線を無視し続けたあと。

  葵は唐突にしゃべりだす。

 もちろん、そこから退こうとはしない。



「夜が怖いことが、あるんです」

「……なんで」

「わからないんですよ。もう、明日の命がどうこうって気にするくらい若くないのに」



 彼より五つも下、沖田や藤堂と同じ歳のはずの彼女がそう言ったことに、永倉は苦笑しか返せない。



「笑わないでください」

「俺よりだいぶ若いくせに、なにを言ってるんですかね」

「いいじゃないですか。自分でそう思ってるくらい」

「はいはい。…で?」

「…夜に一人で部屋にいると、誰もいないことが怖かったり。逆に後ろにいるはずのない人がいるみたいで怖かったり」

「……神も仏も幽霊も信じないって言ってたのはどこの誰だっけ?」

「神と仏は信じてませんよ。でも、幽霊は言葉の綾?」

「言葉の綾って、そういう意味じゃなかったと思うけど」

「わかりましたよ。怖いんですよ、なにかが知らないうちに後ろにいそうで」

「それで?だからどうしたのさ」



 夜、静かに風に舞うように揺れる灯。

 薄く、ぼんやりとしたそれが二人の影を大きく映しているはずだ。

 自分からは見えない、二人分の影を。

 自分の背に身を預けた女が、見ているのだろう。

 恋仲でもない、でも愛しいと想う、彼女が。



「……だから、ですよ」

「だからなにが」

「………だから、ですね」

「なにさ?」

「…あーあ」



 ぐい、と永倉の背中が前に傾いた。

 そして、反動をつけたかのように背中が軽くなる。

 驚いて振り向けば、 葵が大きく伸びをしていた。

 そして、欠伸を一つ。

 もちろん、永倉にはその顔も表情もわからないのだけれども。



「…なんか、のど渇いちゃった。お仕事終わったんですよね?」

「え?…ああ、まあ」

「お水飲んでこようっと。どうします?」

「……俺も」

「はーい」



 先ほどの言葉が嘘のように間延びした返事をして、 葵は部屋を足早に出て行った。

 その表情を見ることは、なかった。















 いったいなんなんだ。

 と、しっかりと腕を組み考え込んでいた永倉を知ってか知らずか。



(わかんないのかなあ……)



 と、 葵が内心呟き大きなため息を漏らしていたことは。

 そしてクスリと小さく笑みを零したことは。

 彼女以外の誰も、知ることはない。















「はい、どうぞー」

「どーも。ずいぶんかかったね。ぶちまけた?」

「そんなことは一回やればやらなくなるものなんです」

「やったことあるんだ?」

「ええ。沖田さんに爆笑されましたけど」

「だろうね」



 コトリと小さく音を立て、置かれたそれは揺れる灯を映す。

 一気にそれを飲み干すと、永倉は少し大きく息をついた。



「……で?」

「なんですか?」

「なにってさっきの続きでしょ」

「あー……」



 少しだけ、永倉から視線を外す。

 そちらを見やれば、またさらに視線を外す。

 …早く話を終わらせたい意思がはっきりと現れていて、また苦笑を漏らした。



「言いたくないならいいけどね…」

「いえ、そういうものじゃなくて…なんて言うんだろ」



 なんでこんな話になったんだっけ。

 そう、小さく呟いて、彼女は立ち上がった。

 そのほうを振り向こうとする永倉に、目で「そのまま」と言うように。

 曖昧な笑みを浮かべて。

 そして、元の位置に戻る。

 背中合わせ。



「…だから、暑いんだって。これ」

「嫌、ですか?」

「嫌じゃ、ないけどさ…」

「………夜が、怖かった」



 自分の気持ちが、罪悪感が作り出す、後ろに感じる気配。

 何人もの人間に刀を振るい、傷を負わせた。

 傷付けた者、死なせた者。

 その魂の気配が、そこにあるような気がした。

 自分の首に、後ろから。

 自分がやってきたのと同じように、刀を突きつけられているような気がしてた。



「だから」



 安心するの。

 永倉さんの、あなたの背がここに在るということ。

 私の後ろに、いてくれるということ。

 温度を持った、あなたがいてくれるということ。

 それが本当に安心するの。

 他人を傷付け、殺めた事実は変えられなくても。



「温かくて、安心する」

「…………」

「……あーあ。このまま寝ちゃいそう…」

葵」



 いつもと同じ、優しい声だ。

 その中に、小さな不安を混ぜた、声だ。



「それは、さ」

「はい」

「誰かが傍にいたら、大丈夫なのか?」

「ええ。…たぶん」

「そう、か」



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